キリンから外資ビールへ アジア経験強みに市場攻めるモルソン・クアーズ・ジャパン社長 斉藤幸信氏(上)

斉藤幸信氏は長年、中国や台湾、ベトナムなど、アジア市場の掘り起こしに取り組んできた
斉藤幸信氏は長年、中国や台湾、ベトナムなど、アジア市場の掘り起こしに取り組んできた

2018年2月、米ビール大手、モルソン・クアーズの日本法人社長に就いた斉藤幸信氏。「アジアビジネスがライフワーク」と語り、ビールや清涼飲料水でアジアの喉をうるおしてきた。その原点は新卒で入社したキリンビール時代にある。国内ビール市場の縮小やライバル社の急追を受け、同社は海外事業を急ピッチで拡大。斉藤氏は中国、台湾、香港、ベトナムで相次ぎ事業を立ち上げ、アジア市場開拓の先兵役を担ってきた。

「ビールは基本的にローカル産業なんです」と斉藤氏は話す。酒は国・地方特有のものであり、ところ変われば消費者の嗜好も変わる。グローバルに大きくビジネスを展開しようと思うと、M&A(合併・買収)や提携などの手段によるのが一般的だという。

「モルソン・クアーズ・ジャパンの親会社であるモルソン・クアーズも、カナダのモルソンとアメリカのクアーズという2つのファミリー企業が2005年に統合してできました。会長はクアーズ家出身のピーター・クアーズで、副会長はモルソン家出身のジェフ・モルソン。2社とももとは地元密着のファミリービジネスであり、上場した現在も両家の出身者がボードメンバーにいるのはユニークかと思います」

乱戦が続くビール業界M&A

ビール業界で世界的な再編の動きが激しくなったのは、2000年代以降のことだ。なかでも業界を騒然とさせたのは、世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI、ベルギー)が15年、業界2位の英SABミラーを買収すると発表したことだった。買収は16年に完了し、これを機に世界のビール業界は「1強」の時代に入ったともいわれている。

大型買収はさらなる再編の引き金にもなった。飲み込まれたSABが独禁法の関係上、アメリカで58%を出資していた合弁会社のミラー・クアーズを売却せざるを得なくなったからだ。

「実は、このミラー・クアーズを買ったのが合弁相手だったモルソン・クアーズ。したがって、モルソン・クアーズは現在、モルソン、クアーズ、ミラーという3つのブランドの集合体です」

激動が続くビール業界で、縮小していた日本での事業を立て直すことと、アジアに事業を拡大していく基盤を作ること。この2つが、モルソン・クアーズ・ジャパンの新社長に就任した斉藤氏に課せられた仕事だ。

31歳で初の海外赴任先は台湾

学生時代から漠然と「海外で仕事がしたい」と思っていたという。慶応義塾大学経済学部を卒業した斉藤氏は1986年、新卒でキリンビールに入社した。国内で営業や販売促進に従事しながら、ずっと海外勤務の希望を出し続け、念願がかなったのは31歳の時。行き先は台湾だった。

「日本から台湾へのビール輸入が解禁されたのに伴い、キリンビールも現地で商品を売ることになりました。私はゼネラルマネジャーとして現地へ派遣され、ゼロから事業を立ち上げる仕事を任されました。それまでは基本的に営業の仕事をしていましたが、そこで初めてPL(損益計算書)をあずかる仕事を経験しました」

商品企画を立て、マーケティング戦略を練り、現地のディストリビューターと販売契約交渉をする。日本から輸入する商品の需給予測も立てた。売上としていくらの予算を立て、そのうち自分が何億円の販促費・広告費を使い、どれくらいの利益が残ったというのが見えたとき、「これがビジネスだ」と実感した。

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