白河 マネジメントに危機感を与える刺激にもなるわけですね。兼業したら評価はどうなるのですか?

山田 兼業している部門がそれぞれ評価をして、それをすりあわせています。ダブルチェックして、相談する感じですね。経験の無いことなので、容易ではありません。

大変なことも含めて、頭を使うことに意義があります。従来通りのマネジメントスタイルではやっていけないとなれば、変わっていかざるをえない。ピラミッド組織だと末端にいくほど、決まっていることをこなす仕事になっていくでしょう。個人個人が仕事を組み立てて、それが成功して全体的に流れていく、そういうふうに変えていきたい。

白河 もっと自律的な、個の組織にしたいということですか。

山田 ある程度大きな組織は、新入社員の心得とか決め事がないと収拾がつかない。だけど一人一人の成長のための最適化をしているか、といったらそうでもないと思うんですよ。一番感受性の高いころに、上からとにかくやれという仕事の仕方はどうなんだろうかと。

知的好奇心を持たず、先輩も上司も意見を聞いてくれない、もう考えない方が楽という仕事なら、大卒から大手よりも、また別の生き方もありますよって盛り上げていきたい。

研究をとことんやるとか、地球の隅々まで一遍行ってみるとか。地域おこしを一生懸命やってみるとか。いろいろな経験をやってから組織に入ったら、簡単には会社の歯車にはならない。今のままだと「企業栄えて、国滅びる」になってしまいます。

過去が悪かったじゃなく、過去は過去でそれでやってきたんだからいい。しかし未来を考えると、過去のままのそれが良いというケースはむしろまれであって、変わっていくしかないと思います。

白河 本日はありがとうございました。

取材を終えて

あとがき:山田会長は生物学者になりたかったそうです。彼の経営戦略は会社を生物や生態系のように見ているのかもしれません。シャーレの中にぽとんと何かを一滴落として、中のものがどう動くか、まるで壮大な実験をしているよう。そう話すと「人間の体って、結局なんやねん、まだよくわからないんですよ。だから、そういう意味ですごい複雑。組織も工業機械モデルよりは、生物モデルのほうが適合すると思います」とおっしゃった。

100年企業を変革するには、組織の反応とバランスを見ながらあれこれ手を打っていくことが重要。しかも、じわじわと効く漢方薬のように。そんな長年にわたる『働き方改革』のモデルを見せていただきました。

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。