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週末レシピ アジの南蛮漬け、包丁を使わず簡単に作る

小アジの揚げ物はおいしいが、揚げ立てじゃないと……。そこで、南蛮漬けに=PIXTA

数年前、東京・上野にある商店街、アメヤ横丁を散策していた際、店員さんの活気ある呼び声につられて寄った鮮魚店の前には、大きな発泡スチロールに氷とともに、大量の小アジが入っていた。値札を見ると1000円となっている。

「これって、何尾で1000円なのかしら」とたずねると、その発泡スチロールすべてで1000円だと言うではないか。ざっと見ただけでも100尾くらいはいそう。すると1尾10円の計算だ。

我が家はアジの空揚げが大好きなのだが、さすがに100尾ものアジを消費するのは大変だろうな。と、あきらめかけたちょうどその時に電話が鳴り、翌日、親戚家族が遊びに来ることになった。そうなれば、この100尾のアジもあっという間に平らげてしまうに違いないと思い購入。周囲の目を気にしつつ、大量のアジを電車で持ち帰った。

空揚げは揚げたてがうまい。しかし客人が来てから100尾もの魚を揚げていると、食べている時間も、おしゃべりをする暇もあったものではない。それに、客人をもてなす料理として、空揚げだけでは色味に欠け、なんとも味気がないではないか。

そこで、「そうだ南蛮漬けにしよう」と、思い立たった。南蛮漬けなら、彩もよく見栄えもする。それに前日に揚げて漬け込んでおいても、翌日に食べごろを越してしまうようなこともないし、客人が来てから慌てることもない。皆んなとゆっくりと食卓を囲むことが可能なのである。

夏にはハモの南蛮漬けもおいしい

季節によってはアジではなく切り身のサケや、今の時季ならハモを使ってもおいしいし、鶏肉でもよい。材料や作り方はほぼ同じだ。注意点は、サケの場合は塩ザケではなく生ザケを使うことくらい。鶏肉の場合はモモ肉でもよいが、ムネ肉の方があっさりと仕上がりもりもりと食べられる。

キノコ類を入れてもよい。その際は、薄く切ったキノコをサッと下ゆでして、しっかりと水気を切ってから加えよう。メイン食材と野菜のアレンジによって、バリエーションが広がるので、いろいろと試してみてはいかがだろうか。

ところで、「南蛮」とは、ポルトガルやスペインをはじめとする西洋を意味している。16世紀、日本に鉄砲やキリスト教をもたらしたポルトガルやスペインは、それまで日本にはなじみのなかった香草や香辛料と油を用いた珍しい調理法も伝えた。そうした料理が「南蛮」と名付けられたと言われている。なので、元となった料理がヨーロッパ各地にあり、ポルトガル、スペインはもちろん、フランスやイタリアにも似たような料理が存在する。

エスカベージュは地中海の南蛮漬け=PIXTA

地中海地方では「エスカベーシュ」(国によって発音に多少の違いはある)と呼ばれ、同じような材料を同じような調理法で作った料理が地中海沿岸の国で食べられている。アジの代わりにイワシや、青魚ではなくキスなどの白身魚、また鶏肉や、日本ではなじみがないがヨーロッパではポピュラーなウサギ肉といった白身肉などが使われている。

南蛮漬けを洋風に仕上げるには、食材を揚げてレモンやフルーツビネガー、もしくはワインビネガーの酸味を効かせ、油はオリーブ油を使用するとよい。野菜は、トマトや彩が鮮やかなパプリカなどを加えてもよいだろう。これを洋皿に盛り付ければ、あっという間に地中海料理のでき上がり。キリッと冷えた白ワインと共に味わいたい。

これから夏バテが心配される季節になるが、そんなとき酢を上手に使ったアジの南蛮漬けは食欲の増進につながり、健康維持に役立つだろう。また、頭や骨も丸ごと食べられるので、カルシウム不足を補うこともできるし、たんぱく質と脂質、それに野菜もたっぷりと取れる。是非今の時期にチャレンジしてほしい。

(世界料理探究家 T.O.ジャスミン)

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