日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/7/1

海鳥の生息数が恐ろしいまでに減っている原因は、いくつもある。餌となるカタクチイワシなどの小型の魚の乱獲。太平洋で深刻なプラスチック汚染で、内臓にプラスチックが詰まったり、獲物が捕れなくなったりして死ぬ海鳥も多い。海生哺乳類の生息数の回復も鳥たちにとっては災難だ。ペンギンのひなを食べるアザラシが増え、ウはアシカが増えて繁殖地から締め出された。

ただ、こうした原因よりも、大型のネズミ、ネコ、ハツカネズミなどの外来の捕食動物の存在は、海鳥にとってはもっと大きな脅威だ。幸い、対処法はある。外来種の生息域を地理データを使って割り出し、哺乳類だけが食べる毒入りの餌をヘリコプターから投下すれば、天敵に的を絞って駆除できる。

ネズミの完全駆除に成功したサウスジョージア島

これまでに実施された最も大規模なネズミ駆除は、英領サウスジョージア島で自然保護活動を行う「サウスジョージア・ヘリテージ・トラスト」が実施したもの。南極半島から約1500キロの沖合に浮かぶこの島は推定3000万羽の海鳥の繁殖地だが、ネズミ類がいなければ、その3倍の海鳥がいてしかるべき場所だ。同トラストは2011~15年に1000万ドル(約11億円)以上の予算を投じ、3機のヘリコプターで雪に覆われていないすべての土地に毒入りの餌を投下した。2015年以降、ネズミ類の姿は1匹も確認されていないという。

ゴフ島でも2019年に同様の駆除が行われる予定で、2020年には、同じく侵略的外来種が問題となっている南アフリカのマリオン島でも実施されることになっている。

海鳥はとても生命力が強い一方で、痛々しいほど無防備でもある。体重10キロのゴウワタリアホウドリが、体重30グラムのハツカネズミによって簡単にひなを食べられてしまうのだ。それでいてこの鳥は、凍えるような海水や猛烈な強風に耐え、大型のカモメを蹴散らすほど強い一面ももつ。寿命が長いため、20年も繁殖に失敗し続けても、巣を脅かす要因がなくなれば、また卵が産める。

「生息数を回復させようという試みに、海鳥はよく応えてくれます」と言うのは、カリフォルニア州の保護団体「アイランド・コンサベーション」のニック・ホームズ科学部長だ。「陸上の脅威に対処すれば、それ以外のあらゆる脅威に対する抵抗力が増すのです」。この州にあるアナパカ島のネズミを駆除したところ、スクリプスウミスズメのふ化成功率が30%から一気に85%に跳ね上がったという。

(文 ジョナサン・フランゼン、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2018年7月号の記事を再構成]

[参考]ナショナル ジオグラフィック7月号では、ここに抜粋した特集「楽園を失う海鳥」のほか、メキシコの肉食コウモリ、人間の身体能力、米国を変えるラティーノ、カシミール憎しみの連鎖、などを掲載しています。

ナショナル ジオグラフィック日本版 2018年7月号 [雑誌]

著者 : 日経ナショナル ジオグラフィック社
出版 : 日経ナショナル ジオグラフィック社
価格 : 1,110円 (税込み)