「存在自体知らない」ことに about一言で変わる意味
デイビッド・セイン「間違えやすい英語」(25)know
言葉の使い方を間違えて相手に誤解されてしまった。そんな体験はどなたにもあると思います。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が間違えやすい英語の使い方を解説します。今回は、「知っている/知らない」の話。know に about をつい付けたくなりますが、誤解につながる危ない英語です。
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勉強するときはいつも完全を目指す。しかし会話をするときは通じることを目指す。これが英会話には必要なポイントです。相手を前にして英語を話すときは、完璧な英語でなくても構いません。間違いがあってもいいのです。フレンドリーに笑顔で話せば、不完全さは補われます。間違いを恐れず英語を話しましょう。そして勉強するときは完全を目指しましょう。
日本人にとってabout は非常になじみがよく使い勝手のよい言葉のようです。日本人の英語の中にabout が頻出するのは自分の言葉を断定的にしたくないことの表れかもしれません。technical terms 「技術用語」についてのヒロシの発言はまたしてもピントがずれ、ナンシーを混乱させたようです。一体どんな発言だったのでしょうか?
それはこんな会話でした。
Hiroshi: Sorry, but I don't know about technical terms.
Nancy: Really? Don't you have technical terms in Japan?!
Hiroshi: Of course we do, but…
ヒロシは期せずしてこのように言ったことになります。
ひろし:すみませんが、技術用語の存在自体を知りません。
ナンシー:本当? 日本には技術用語がないの?
ひろし:もちろん、ありますけど……。
about は曖昧な意味を持つ言葉です。また、簡単に口をついて出る言葉でもありますが、あるとないとでは大違いというほど大きな意味を持つ場合があります。I don't know about technical terms. と言えば「それについては知らない」すなわち「存在自体を知らない」という意味になってしまいます。「えっ、日本には『技術用語』が存在していないの?」とナンシーが受け取ったとしても無理からぬことです。例えば、 I don't know about the meeting. なら「その会議があるということを知らない」の意味になります。
では、どう言えばよかったのでしょう?