コラーゲン・酵母で選ぶ夏の日本酒 美肌や代謝効果も
夏が近づくと、冷蔵庫で冷やして飲む冷酒向きの日本酒がたくさん店頭に並びます。日本酒の消費量は長らく低迷していましたが、日本食ブームもあり輸出量は近年増加の一途。スパークリングタイプなどバリエーションも豊かになり、日本酒の楽しみ方も多様化してきました。米や麹(こうじ)を原料とする発酵食品である日本酒は、肌によいコウジ酸、代謝機能をアップするアミノ酸などの栄養素を豊富に含んでおり、美容にも健康にもうれしい効果が。中には、菌が生きたまま摂取できるタイプもあるといいます。
「日本酒は健康によい」は本当? 気になる糖質についても
日本酒は、「サプリを飲んででも摂取したい栄養素の一つであるアミノ酸の宝庫。動脈硬化、心筋梗塞といった生活習慣病の予防効果もあるとされています。また、アルコールは適量なら血管を広げ、血流を活性化してくれます。肩こりの改善も期待できますね」と教えてくれたのは、一般社団法人日本のSAKEとWINEを愛する女性の会(通称・SAKE女の会)の代表理事である友田晶子さん。
「美容面でもアミノ酸は有効です。血流を促し、健康的な美しさ、みずみずしい肌を作ります。日本酒は原則的には米と麹で造りますが、麹の酵素にはたくさんのコウジ酸が含まれており、コウジ酸は高級化粧品にも使われている保湿と美白効果のある成分として知られています。ツヤツヤの肌を作るのに日本酒はおすすめですね」と友田さん。
気になるカロリーや糖質については「カロリーは基本的にアルコール度数に比例しますし、米を原料としているので、カロリーも糖質もあります。ただ、ジュースやスイーツ、油ものに比べると格段に低く、また体に蓄積されず消費されやすいエネルギーでもあるので、気にするほどではありません。それより、お酒と一緒に食べる料理のカロリーを抑える方がヘルシーといえると思います」と友田さんは続けます。
「酵素を取りたいなら、火入れをしていない生酒(なまざけ)を選ぶといいでしょう。通常日本酒は瓶詰めされるまでに二度火入れ(加熱殺菌)されています。生酒なら、酵素が不活性化されていない(働きをとめていない)状態で摂取できます。中でも、オリ(お酒を搾った際に残る米の破片や酵母)を多く残したにごり酒は酵母菌や麹菌なども生きたままなので、栄養面でもおすすめです。にごり酒は、ミルクで割るとラッシーのような味わいになって飲みやすいですよ!」とのこと。「その他は発泡系のものもおすすめですね。ワイングラスで氷を入れて楽しんでもいいし、緑茶割りなんかもスッキリしておいしいのです。いろいろ試してみてくださいね」(友田さん)
さてここからは、日本酒ビギナーの女性にもおすすめの、話題の日本酒をご紹介します。
話題となって今やレア! きょうかい6号酵母の日本酒
米が発酵してアルコールとなるのに必要な酵母には様々な種類があり、大まかにいうと日本醸造協会によって頒布される「きょうかい酵母」と、その他地方自治体などのオリジナル酵母に分けられます。きょうかい酵母は現在、1号から19号までが認定されていますが、6号酵母は現在頒布されている中でも最古のものです。
6号酵母発祥の蔵である秋田県の新政酒造では、この6号酵母を使用し、秋田県の米、水にこだわって酒造りをしています。その中でも、非常にレアになっているのがシリーズ「No.6(ナンバーシックス)」。6号酵母の独特なおいしさをダイレクトに表現するため、火入れはせず、マイナス5度以下で鮮度を管理している繊細な生酒です。
新政酒造の代表取締役社長、佐藤祐輔さんによると「6号酵母は、現存する清酒酵母の中でももっとも古く、遺伝子的にもそれ以降の清酒酵母の先祖といえる酵母です。より自然のままの酵母に近いため、味や香りに派手さはありません。非常にナチュラルで、素材の表現を下支えするような働きをします」とのこと。
「『No.6』のシリーズは3種ありますが、酸味が好きな方はS-Typeがおすすめです。X-Typeは万人好みの味だと思います」(友田さん)。もしどこかで飲む機会があれば、ぜひ試したい銘柄です。ほかに新政酒造の日本酒の中で、女性におすすめなのが「亜麻猫スパーク」。
通常の麹に加え、一部焼酎用の麹を加えて醸されており、心地よい酸味のある「亜麻猫」のスパークリング(発泡)バージョン。甘酸っぱい飲み口に加えて、爽快感いっぱいのシュワシュワとしたのどごしで、和食にも洋食にも合わせやすく、ワイングラスで楽しむのにピッタリです。
瓶内二次発酵によるスパークリング日本酒
岩手県の日本酒として有名な「南部美人」から発売されているのは、シャンパンと同じ瓶内二次発酵という製法で造られたスパークリング日本酒。SAKE COMPETITION2017の発泡清酒部門で1位を獲得しています。
ワインのようなおしゃれなラベルの「南部美人あわさけスパークリング」。南部美人の営業課長 平野雅章さんによると「通常通り日本酒の仕込みをタンクにて行い、1回目の発酵をさせた後、瓶詰めし打栓をします。その後瓶内で2回目の発酵をさせます。この瓶内二次発酵では、発酵の際にでるガスが瓶内のお酒と混じり合い、あわさけ特有のキメの細かい泡が生まれます。その後お酒の中にあるうまみ成分を抽出しきったオリを取り除くためにネックフリージング(瓶の先にオリをため瞬間的にその部分だけ凍らせ取り除く方法)を行い、再度打栓し針金でしっかりとめ、火入れ(熱殺菌)をしております」と平野さん。
フルーティーな吟醸香と優しい口当たり。スパークリングならではの軽やかさと日本酒ならではの米のうまさも感じられる一品。「0度に近い温度までキリッと冷やし、そのままストレートで飲むのがおすすめです。料理は、旬野菜のてんぷら、生ハム、貝酒蒸し、白身魚のカルパッチョなどが良く合いますよ」(平野さん)
女性にうれしい美肌のための日本酒
「天狗舞」で有名な石川県の車多酒造からは、肌によい成分が通常の3倍も入っているという日本酒が登場しています。
「日本酒をよく飲むお相撲さんや酒蔵で働く杜氏(とうじ)さんや蔵人さんたちは肌つやがよいとよく言われています。これは日本酒に含まれる様々な成分の相乗効果があるためと思われますが、その中でもα-EGという成分はコラーゲンの生産を促し、優れた保湿効果があるといわれています。shu reにはこのα-EGが通常の日本酒の約3倍含まれています。弊社で行った飲用試験でも、皮膚コラーゲンの増加が確認でき、化粧のりが良くなったなどの声が聞かれました」と車多酒造研究開発室長の徳田耕二さん。
車多酒造近隣にある金沢工業大学の尾関健二教授が中心となり、α-EGの効果が研究されてきたそうで、数年前から商品開発などで協力しあってきたところ、新しい日本酒にもα-EGを生かせないかと考えたことが開発につながったそうです。
自然に存在する菌を生かした山廃仕込みという製法で、奥深く個性豊かな味わい。α-EGは少し苦みのある成分なので、ほのかな苦みを感じます。そのままでもおいしいですが、果実を漬け込んでサングリアのようにアレンジするのもおすすめ。カクテルベースとしても楽しめます。火入れしてあるので、常温での保管が可能です。
日本酒には、昔ながらの製法の中にも新しい知恵があり、女性も楽しめる飲みやすいものもたくさん登場しています。この夏はカジュアルに冷酒を楽しんでみては。
※価格は特記がない限り、税抜きです。
(取材・文 GreenCreate)
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