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正解は、(2)ウソです。階段の上り下りをするときに使うエネルギーは、安静時の3.5倍になります。

階段は最も身近で、かつ最高のトレーニングの場

雨の日や暑い日は、運動のためにわざわざ外に出るのもおっくうになります。そんなときは、室内で気軽にできる運動で体を動かし、気分をスッキリさせてはいかがでしょうか。

「アスリートが筋肉を肥大させるために徹底的に追い込もうとするならいざ知らず、健康的に生活するための筋肉量維持であれば、日常生活の中でどんな場所や時間でもできますよ」と話すのは、現役のボディビルダーでもあり、トレーニングや肉体改造、筋肉学に関わる多数の著書がある、日本体育大学准教授の岡田隆さん。

なかでも岡田さんが勧めるのは、階段の上り下り。「加齢とともに衰えやすい下半身の筋肉を鍛えるには、階段は最も身近で、かつ最高のトレーニングの場です。階段の上り下りの運動強度は3.5メッツで、安静時(1メッツ)の3.5倍のエネルギーを使うことになります」(岡田さん)。

「メッツ(METs)」とは、Metabolic Equivalentsの略。座っているときなど、まったく体を動かしていないときを1メッツとして、ある身体活動がどれくらいの“強度”に当たるかを示す単位です。

「3.5メッツというのは、軽いウエイトトレーニングと同程度です。つまり、電車の乗り換えやオフィス内の移動のときにエスカレーターやエレベーターに乗らずに階段を使えば、自重筋トレ[注1]をしているのと同じことになるんです。さらに、使う筋肉を意識しながらいくつかのバリエーションを使い分ければ、下半身の筋肉をバランスよく鍛えられます」と岡田さんは話します。

かかとから踏み込むとお尻が引き締まる

平均的な建物の階段だと、2階までの段数は13~14段。より負荷が高くなる「一段飛ばし」で上ると、1回につき片脚6~7回の自重トレーニングになります。

つまり、「1日に5回階段を使えば、気が付かないうちに30~35回の自重筋トレを実行しているのと同じ効果を得られるんです」(岡田さん)。同じ下半身のトレーニングであるスクワットを、10~12回×3セットを一度に行うのは大変に感じますが、複数回に分けた階段上りであれば、それほど難しく感じないのではないでしょうか。

階段を上るときは、“どの筋肉を使っているのか”という意識を持つことも重要です。「上るときにかかとから踏み込む意識を持つと、お尻周りの臀筋(殿筋)群に力が入りやすくなります。つまり後ろ重心ですね。臀筋群を鍛えればヒップアップ効果があるので、男女を問わずきれいなスタイルを作るためにも有効です。逆に、つま先を階段にかけてかかとを浮かすようにすると、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)と太もも前面の大腿四頭筋に刺激が入ります。狙う筋肉を決めて、2つのパターンを目的によって使い分けるのが良いと思います」(岡田さん)

かかと着地(左)ではお尻周りの筋肉が、つま先着地(右)では、前ももの大腿四頭筋やふくらはぎの下腿三頭筋が刺激される。上手に使い分けよう。(イラスト:堀江篤史)

階段の上り下りに慣れてきたら、さらに筋肉に刺激が入る一段飛ばしにも挑戦してみましょう。「つま先ではなく、かかとからぐっと踏み込み、体を一気に持ち上げると、臀筋群をさらに効率よく鍛えることができます。臀筋群は脚を支え、全身のバランスを保つ重要な筋肉であるにもかかわらず、眠ったままになっている人が多いので、ぜひ、階段は一段飛ばしで積極的に上って、お尻を引き締めてほしいですね」(岡田さん)

[注1] 自重筋トレ:重いウエイトを使わずに、自分の体重だけを利用して行う筋力トレーニングのこと。(例:スクワット、腕立て伏せなど)

(日経Gooday編集部)

[日経Gooday2018年06月18日付記事を再構成]

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