心理学から文学へ切り替え

そもそも心理学に興味を持った理由の1つも、自分はなぜ人と違うのかを知りたかったから。だが、ふたを開けてみると、大学の心理学の授業は基本的に、マーケティングのため、人が何を考えているのかを学ぶ場だった。「人が何を考えているかなんて、そんなこと、どうでもよかった」。落胆し、心理学から文学へ舵を切った。今度は文学を通じて自分の正体を解き明かそうと考えた。

新政酒造は6号酵母を使った「No.6(ナンバー・シックス)」シリーズで知られる

一番好きな作家はドフトエフスキーだったが、SF小説や反体制的なビートニク小説など、当時は文学と認知されていなかった作品にも共感を覚えた。バックパッカーとして東南アジアやインド、南米なども旅行した。そのころ、将来は作家になろうと決めた。でも、自分が何者なのかは、相変わらずわからないままだった。

しかし、自分の正体は意外な形で知ることとなる。

発達障害と診断された

気が付くと、自分と似たような友達が周りにたくさんいた。ある時、人と違う行動の話題で盛り上がり、医者に診てもらった。発達障害の一種、注意欠陥障害(ADD、Attention Deficit Disorder)と診断された。それまでの自分を振り返り、合点がいった。

発達障害は特定の分野で人並み外れた才能を発揮することもある。歴史上の偉人の中にも発達障害が疑われる人物が相当数いることが、いくつかの研究で指摘されている。

天才と呼ばれていることについて佐藤氏は、「天才というのは世の中に貢献して初めて天才。僕は単なるダメ人間」と断ったうえで、「人はそれぞれ、自分にぴったり合ったやり方でやれば必ず大成功すると思う。でも、多くの人はだいたい何でもそつなくこなせるから、他人に言われた通りにやるだけで自分に合ったやり方を探そうとしない。逆に、僕の場合はそつなくやることができなかったので、自分に合ったやり方をとことん探した。それが結果的に、酒造りに関してはうまくいっているのではないか」と自己分析する。

また、こうも言う。「好きなことをやっているときは集中力が高まり、徹夜も平気。結局、費やす時間が人より多いだけだと思う」。

ADDについては「いまだに付き合わなくちゃいけない」。気を付けてはいるが、疲れたり仕事が忙しかったりすると症状が出るという。だが、自分の興味あることへの徹底したこだわりと情熱が、「幻」の日本酒を生み、多くの日本酒ファンを虜にしているのは間違いない。

(ライター 猪瀬聖)

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