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パラパラチャーハン作れないのはダメ人間? 男の挑戦 男のチャーハン道(1)

2018/6/17

パラパラが命、うまいチャーハンへの探究=PIXTA

 パラパラのチャーハンを作れないのは「ダメ人間」であるーー。そして著者の探究は始まった。火力はどうする、卵コーティングは正しいのか、油の量は、鍋は、具材は……。苦節数年、誰もが家庭で「パラパラ」にするカギが、ある身近な食材にあることを突き止める。日本経済新聞出版社の新書、日経プレミアシリーズ『男のチャーハン道』から4回にわたり、絶品チャーハンの作り方をお伝えする。

 チャーハンといえば「パラパラ」。その軽やかな食感を実現するには、強い火力で中華鍋をあおることが不可欠‐‐。そんなふうに思ってきた。

 強力な業務用コンロに中華鍋をセットし、油慣らししたのち、適量の油を加える。よく溶いた卵を入れ、ひと呼吸おいてご飯を投入。鉄製の中華おたまでご飯をほぐすように混ぜ、中華鍋を前後に動かしてあおる。細かく刻んだ具を入れ、さらにあおって飯粒を宙に踊らせつつ、パラパラに仕上げるのだ。

 中華料理店やテレビで目にする、プロの料理人たちの迷いのない鍋づかい。厨房に勢いよく立ちのぼる炎。中華おたまで激しくかき混ぜる動き……。飯粒が舞い踊る姿が、パラパラなチャーハンのイメージと直結しているのだ。

 中学時代、当時学校でブームになっていた『美味しんぼ』という漫画にチャーハンが登場したときのことは、いまも鮮明に覚えている。まさに「強い火力で鍋をあおる」ことをテーマにした内容だった。

 強い火力でチャーハンをあおることのできない気弱な中華料理人が、その回の登場人物だ。彼が中華街の大物から、「炒(いた)め物の基本であるチャーハンすらまともに作れないやつは、料理人失格だ!」みたいな感じで叱責される。まるで彼の人間性まで否定するようなダメ出しっぷりが、強く印象に残った。

「直火の威力」と題された回が収録されているのは『美味しんぼ』第4巻。単行本の発売は1985年なので、私が16歳のときだ。当時はリアルタイムで雑誌『ビッグコミックスピリッツ』を読んでいたはずだから、私が「直火の威力」を読んだのは、その少し前、たぶん中学2年のころではないか。

 思春期の心になにより刻みつけられたのは、この「チャーハンをパラパラにできない人=ダメ人間」的な思想である。

 おいしいチャーハンを作れないというだけで、料理人の性格や人間性まで全否定されてしまう。どちらかというと気が弱かった(いまもそうだが)私は、おいしいチャーハンを作れないやつ=意気地なし、という決めつけに戸惑った。

 それと同時に、ものすごく焦ったのだった。パラパラのチャーハンを作れないと、「馬脚をあらわした」だの「イジイジかき回して」だの、そこまでいわなくていいのに……というぐらい罵倒されるのだと。

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