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「日本の経営」はどこへ 『バブル』著者が新著で考察 紀伊国屋書店大手町ビル店

2018/6/8

通路中央の平台のエンドに6列で平積みする(紀伊国屋書店大手町ビル店)

 ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。金融の街だけに『銀行員はどう生きるか』など、銀行業界の働き方の未来を考える本が引き続きよく売れている。そんな中、書店員が注目するのは、元証券記者が経営者に焦点を当てて日本の経営を考えた一冊のノンフィクションだった。

■経営者巡る17の物語

 その本は永野健二『経営者』(新潮社)。著者は元日本経済新聞の記者で、1970年代からおよそ40年、証券記者や日経ビジネス編集長、日経MJ編集長などとして日本経済を見つめ、考え続けてきた。その経験をベースに、バブル時代を独自の視点で検証し、話題を集めたのが前著『バブル』(2016年刊)だった。そこから1年半、改めてシンプルなタイトルで世に問うのが本書となる。戦前カネボウの武藤山治、日本興業銀行の中山素平に始まり、ユニクロの柳井正、ソフトバンクの孫正義まで、17の物語で戦後経営史を彩る経営者の理念と行動を追い、功罪を論じている。

 記者や編集幹部として実際に見聞きした経営者のちょっとした一言や表情を手がかりに、骨太な経営者論にもっていくところが本書の味だ。日立を語るのに日立クレジット社長の花房正義を持ってきたり、孫正義を語るのに最高財務責任者(CFO)として伴走した北尾吉孝を配したり、著者ならではの人物配置もおもしろい。さらに17の物語を歴史的なパースペクティブへとつなげていこうという野心的な「日本の経営」論でもある。

■渋沢資本主義という補助線

 経営者に焦点を当てることで試みたのは、「戦後の『日本の経営』を総決算して、学び直す視点」の提示だ。そのために著者は「渋沢資本主義」という補助線を持ってくる。「欧米流の利益第一の資本主義ではなく、『公益』を第一に考え、公益の追求が利益を生み出す資本主義」のことで、日本資本主義の父、渋沢栄一が唱導、実践した。明治維新からバブル崩壊までの120年の歴史を「渋沢資本主義」と呼び、戦後をその後期と位置づける。その視点から経営者の行動や決断を見ていくと、東芝の悲劇の構造も見えてくるし、三菱重工業の危機の本質も浮かび上がってくるというしかけだ。

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