夜型と朝型、慢性疾患多いのは? 死亡リスクにも差
就寝時間が遅く、朝なかなか起きられない「夜型」タイプの人は、早寝早起きの「朝型」の人に比べて糖尿病などの慢性疾患の患者が多く、死亡リスクも10%高いことが、米国の研究で明らかになりました。
朝型人間には、高齢者、女性、非喫煙者が多い
一般に、朝型の人に比べ、夜型の人には、代謝系の異常や循環器系の疾患が多く見られます。夜型の人たちには、喫煙者や過体重・肥満者も多く、循環器疾患の危険因子を持つ人の割合も高いことが知られています。しかし、その人が夜型か朝型かということと死亡リスクの間に関係があるかどうかを調べた研究は、これまでありませんでした。
そこで、米Northwestern大学のKristen L. Knutson氏らは、「夜型の生活は、あらゆる原因による死亡と循環器疾患による死亡のリスクの上昇に関係する」という仮説を立て、英国の一般市民を対象に、これを検証することにしました。
38~73歳の43万3268人(平均年齢は56.5歳、55.7%が女性)を、日常の活動時間に基づいて「明らかな朝型」(27.1%)、「やや朝型」(35.5%)、「やや夜型」(28.5%)、「明らかな夜型」(9.0%)の4群に分類し、平均6.5年追跡しました。「明らかな朝型」の集団には、高齢者、女性、非喫煙者が多いという特徴が見られました。
夜型人間は糖尿病リスクが1.3倍、精神疾患リスクが1.9倍
各グループについて、特定の慢性疾患の患者の割合を比較したところ、どの疾患の割合も、「明らかな夜型」の集団で高くなっていました。例えば、「明らかな朝型」の人に比べ、「明らかな夜型」の人が精神疾患を発症するリスクは1.94倍で、糖尿病のリスクは1.30倍、神経疾患のリスクは1.25倍、消化器疾患/腹部疾患のリスクは1.23倍、呼吸器疾患のリスクは1.22倍でした。
次に、あらゆる原因による死亡との関係を調べたところ、「明らかな朝型」の人と比較すると、「明らかな夜型」の人の死亡リスクは1.10倍に上昇していました。一方で、循環器疾患による死亡のリスクには、統計学的に意味のある差は見られませんでした。
研究者たちは、「夜型の人に見られる死亡リスクの上昇には、体内時計に基づく生理的な時間と、仕事や社会生活によって強いられる活動時間帯の慢性的なずれに刺激される、健康を脅かす行動(喫煙や過食、カフェインやアルコールの過剰摂取など)や、精神疾患(抑うつや気分障害など)などが関係している」との考えを示しています。
さらに、こうした見方に基づいて、夜型の人の死亡リスクを低下させるためには、例えば体内時計を調節するような治療法を探す研究を進める、または、夜型の人の活動時間をできるだけ体内時計に合わせるように労働環境を調整する必要があると研究者たちは述べています。
論文は、2018年4月11日付の「Chronobiology International」誌電子版に掲載されています[注1]。
[注1] Knutson KL, et al. Chronobiol Int. 2018 Apr 11:1-9. doi: 10.1080/07420528.2018.1454458.
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。
[日経Gooday2018年6月5日付記事を再構成]
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