所得の水準によるエンゲル係数の差も広がっています。昨年は、所得が最も低い階層の係数が30.6%、最も高い階層は22.1%でした。首都大学東京の阿部彩教授は所得階層による食費の差にも注目しています。年間の消費が1500万円でエンゲル係数が20%、消費が150万円で係数が25%の世帯を典型例として挙げ、後者の食費は前者の8分の1にとどまり、家計の「食格差」が大きくなっていると問題を提起しています。
阿部氏は「食費を減らす低所得層が増え、子どもの食事の質が低下している。親の所得格差は子どもの食格差を引き起こす」と心配しています。
阿部彩・首都大学東京教授「子供の食格差是正、給食の役割大きい」
日本のエンゲル係数は2000年代半ばから上昇し、低所得層ほど食費の負担が重くなる傾向が強まっています。その影響を受け、子どもの間に「食の格差」が生まれていると指摘する首都大学東京の阿部彩教授に、現状と対策を聞きました。
――2017年のエンゲル係数は、最も所得が高い階層で22.1%、低所得層で30.6%と開きがあります。このデータをどう解釈すればよいのでしょうか。
「所得が低い階層はエンゲル係数が高く、食費の負担が重くなっています。支出を節約するために、まず食費をカットしているという声をよく聞きます。自治体などが実施している調査でも、食費が不足している家計の実態が明らかになっています。例えば、東京都の17年の調査では、過去1年間に金銭的な理由で食料が買えなかった経験がある子育て世帯は、小学5年生がいる世帯では9.7%でした。大阪府の17年の調査では、おおむね半年の間に経済的な理由で『食費を切り詰めた』と回答した保護者が、小学5年生がいる保護者の37.4%に達しました。『理髪店・美容院に行く回数を減らした』や『スマートフォンへの切り替え・利用を断念した』よりも高い結果でした」
――食費を切り詰める前に別の出費を減らすことはできないのでしょうか。
「子どもを公立の学校に通わせたくても、受験競争が厳しく、やむなく私立の学校に通わせている世帯は少なくありません。教育費の負担が重いうえに家賃や携帯電話代もカットできず、もっともカットしやすいのは食費だと判断しているのです」