ディスクブレーキで雨も安心 高級ロードバイク5選
今、スポーツタイプの自転車(以下、スポーツ自転車)で長距離の自転車ツーリングや自転車通勤を始めるなら、ディスクブレーキを搭載したロードバイク(以下、ディスクブレーキ ロードバイク)がいい。レースにも使用される高性能・高価格モデルから、10万円台で買える入門モデルまで登場し、欧米ではツーリングや街乗り用としてもすでに人気が高い。
東京など全国に36店舗を展開するスポーツ自転車ショップ「ワイ・インターナショナル」の新宿本館(東京都新宿区)の那須信一店長に、ディスクブレーキ ロードバイクのメリットと選び方について聞いた。
雨天時もブレーキングが安定、太めのタイヤも
ディスクブレーキは、もともとオフロード走行時でも高い制動力を発揮する必要があるMTB(マウンテンバイク)用に作られたアイテム。那須店長は「近年、その制動力をオンロードに適した程度まで調整したロードバイク用ディスクブレーキが開発され、注目が高まっている」といい、近い将来はロードバイクでもディスクブレーキが中心になると予測する。
これまでロードバイクに搭載されていたリムブレーキは、ホイール(車輪)のリム(タイヤが付いている外縁部分)横をゴムなどでできているブレーキシューで左右から挟み込んで減速・停車する仕組みだった。
これに対し、ディスクブレーキはホイールの中心部に取り付けられた金属製のローターと呼ばれる円盤を、金属などの素材で作られたブレーキパッドで挟み込む仕組みになっている。そのメリットは、雨天時でも安定したブレーキングが可能で、安全性が向上すること。またリムブレーキ搭載ロードバイクよりも太めのタイヤを装着できるのもポイントだ。
「リムブレーキモデルの場合、タイヤ幅は25mm程度までしか装着できなかったが、ディスクブレーキロードバイクには28~30mmサイズも無理なく装着できる。太めのタイヤのエアボリュームによるクッション性の高さによって、長距離を走っても体に伝わる振動が軽減され、快適に走り続けられる」(那須店長)
油圧式かワイヤー式かに注目してディスクブレーキを選ぶ
ディスクブレーキにはオイルの力でブレーキパッドを作動させる油圧式と、リムブレーキと同じくワイヤーを引っ張って作動させる機械式の2タイプある。
上位モデルによく採用されている油圧式は特に制動力が安定し、ブレーキレバーの引きも軽くなる。よって手の小さい人も使いやすく、長い坂道などでブレーキを握り続けなければならない場合もストレスがない。那須店長も「ブレーキ性能だけを考えるなら、予算が許せば油圧式」と薦めるが、「油圧式はメンテナンスが難しい。定期的にプロショップに持ち込んで点検できる人向け」とも。
一方、機械式ディスクブレーキは、レバーを引くのに必要な力はリムブレーキとほぼ同じ。油圧式ディスクブレーキ採用モデルよりも低価格で、これまでのリムブレーキと同様に(ある程度の知識があれば)自分でメンテナンスできるので、輪行袋に入れて電車に乗せるなどの自転車旅やツーリングにも使いやすい。
長距離&通勤用ディスクブレーキ ロードバイク5選
●トレック「ドマーネSLR 9 ディスク」
高性能レーシングバイクからツーリング・街乗りモデル、電動アシスト自転車までリリースする米国ブランド、トレック。米国の軍事レベルのカーボン素材をベースにした、OCLVカーボンをフレームに使用したのが「トレックドマーネSLR 9 ディスク」だ。石畳の道も走ることで有名なフランス、ベルギーのプロロードレースで勝利するため、五輪の金メダリストでもある名選手ファビアン・カンチェラーラからのフィードバックによって開発された逸品。高性能なカーボン素材フレームに油圧式ディスクブレーキを搭載したことで、悪路でも安定した走りを手にすることができる。
「ペダルを踏み込んだ瞬間に推進力になるような高い剛性と、路面からの衝撃を吸収するといった相反する性能を高次元で兼ね備えた一台。車体の前側のヘッド部分(ハンドルが取り付けられているフレーム部分)と後側(サドルが付いているシートポスト部分)の一部がしなり、路面からの衝撃を吸収するIso Speedと呼ばれる独自技術が採用されているので、長距離を速く快適に走りたいライダーに最適。トレックのバイクはすべて生涯保証されている点も魅力」(那須店長)
●ウィリエール・トリエスティーナ「チェントディエチ NDR」
イタリアの人気ブランド、ウィリエール・トリエスティーナの「チェントディエチ NDR」は、販売段階では通常のリムブレーキが装着されているが、フレームの前後にディスクブレーキを装着する台座が付き、ディスクブレーキ ロードバイクに仕様変更できる1台(両ブレーキタイプを同時に装着は不可)。シートチューブ(サドルが装着されているフレームパイプ部分)とシートステイ(シートチューブからホイールまでをつなぐパイプ部分)の接合部分に振動吸収性素材を配し、走行性能と振動吸収性を高めている。
「このチェントディエチ NDRのようなカーボン素材を使用したハイエンドモデルは高価なため、『数年したらディスクブレーキ ロードバイクをもう1台』という人は少ないはず。また、まだロードバイクの主流はリムブレーキなので、リムブレーキ用のホイールなど交換できる周辺アイテムも豊富にラインアップされている。最初はリムブレーキのまま乗り始め、ロードバイク用のディスクブレーキ周辺アイテムが増えてきたタイミングを見計らってディスクブレーキに変更すれば、1台を長く乗り続けられる」(那須店長)
●BMC「チームマシンSLR01ディスク」
スイスを拠点とするスポーツバイクメーカー、BMC。「チームマシンSLR01ディスク」は、世界最高峰のプロロードレースであるツール・ド・フランスなどでプロ選手に使用されているリムブレーキモデル「チームマシンSLR01」のディスクブレーキモデル。だが、ただディスクブレーキを装着する台座を付けただけではない。コンピューター解析とプロ選手からのフィードバックによって、ディスクブレーキを装着した際の最適な剛性に設計。数千台のプロトタイプを経て誕生したという。
「カーボン素材を使ったフレームは軽く、上り性能も平地での巡航性能も高いオールラウンドモデル。これまでのチームマシンSLR01と同じ最高の走行性能に、ディスクブレーキの高い制動性がプラスされ、レースから本格的なロングライドまで爽快な乗り味を体験できるのでは」(那須店長)
●キャノンデール「シナプス ディスク105 SE」
優れたアルミ製造技術を持つ米国ブランド、キャノンデールの「シナプス ディスク105 SE」はアルミ素材フレームの数カ所につぶし加工が施され、フレーム自体が適度にしなることで路面からの衝撃を吸収。長時間のライディングでも体にかかるストレスを軽減する。変速機などのコンポーネントには日本のシマノ製105(スポーツクラス中級モデル)と、機械式ディスクブレーキが装備されている。
「自転車ブレーキブランド、TRP製の機械式ディスクブレーキを採用している。機械式ディスクブレーキでは、左右のブレーキパッドのうち片側だけが動いてブレードを挟み込む構造のものと、左右から挟み込むように動く2タイプがあるが、TRP製の機械式ディスクブレーキは左右から挟み込むタイプ。片側のパッドのみ動くタイプよりもブレーキングが安定し、制動力が高い点が魅力」(那須店長)
●ジャイアント「コンテンドSL1ディスク」
高い技術力とコストパフォーマンスを売りにする台湾の総合自転車メーカーであるジャイアント。アルミ素材フレームの「コンテンドSL1ディスク」は、ブレーキレバーからステム(フレームとハンドルバーをつなぐ部分)前部と一体化したユニット「コンダクト」までワイヤーが引かれ、そのコンダクト部分で油圧式に変換される同社独自のシステムが採用されている。
「ブレーキ性能としては油圧式に近く、すべて油圧式ディスクブレーキにするより価格が手ごろ。自転車通勤から休日のロングライドまでさまざまな楽しみ方ができる一台」(那須店長)
(ライター 星野知大)
[日経トレンディネット 2018年5月29日付の記事を再構成]
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