今年の夏は屋上バーベキュー 仕事帰り、街中で楽しむ
今年の暑気払いはどこに行こう。ビアガーデン? ナイトプール? 今夏の注目株となりそうなのが「屋上バーベキュー」だ。ビルオーナーが使っていない屋上の活用策としてバーベキュー場を開く例が増え、メニューや施設も多彩だ。仕事帰りに手ぶらで行ける気軽さと、都会でバーベキューを楽しむ非日常感が人気だ。
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午後7時、少し強い風にのってジューという食欲をそそる音と香りが広がる。JR立川駅に直結した商業施設、ルミネ立川(東京都立川市)の屋上に、バーベキュー場「BBQPIT」が今年オープンした。仕事帰りに同僚と集まった美容師の女性は「昨年はナイトプールに行ったけど、バーベキューの方がお得で満足」と、グリルの前で笑顔を見せる。
持ち込み食材、施設内店舗で
ルミネ立川のBBQPITの場合、食材は持ち込み形式だが、階下の店舗でも一通り集められる。1グリルあたりの利用料は1時間3000円で、8人まで席につける。これと別に1人1500円払えば、飲み放題を付けることができる。飲み放題の料金は、ルミネ立川の対象店舗で食材を買えば同じグループ全員が500円値引きされる。4人が参加した美容師のグループは、食材と飲み物代を合計して「1人3000円弱の予算で済んだ」とうれしそう。
BBQPITを運営するヒーロー(東京都武蔵野市)は、植物園の京王フローラルガーデンアンジェ(東京都調布市)に隣接するテラスや、アトレ目黒(東京・品川)の屋上でもバーベキュー場を運営して来た。マネジャーの矢ノ中聡氏は「近場で簡単に非日常の雰囲気を楽しめることが人気を呼んでいる」と話す。
こうした都市型の屋上バーベキュー場の出現で、バーベキューのイメージ自体にも変化が表れている。日本ハムが運営する情報サイト「BBQ GO!」の調査では、これまでバーベキューをしたい場所の上位は「川・河畔」「海・海辺」が定番だった。しかし17年度の調査では「屋上」が大きく伸び、7位に浮上した。
このように屋上がバーベキュー場として定着しつつある背景には、ビルオーナーが遊休地を活用したいという思惑がある。
東京都心では銀座の紙パルプ会館(東京・中央)が屋上をバーベキュー会場として貸し出している。アクセスの良さもあり、平日夜もほぼ100%近い稼働率という。同会館の田中淳夫専務は「屋上を夜の空き時間に収益化しようと考えた」と話す。
紙パルプ会館にバーベキュー会場の運営を提案したのはバーベキューの専門ベンチャーであるREALBBQ(東京・杉並)だ。福山俊大取締役は「都心でバーベキューをするギャップや、SNS映えする景色が人気を呼んでいる」と分析する。20~30代の利用が多く、特に銀座の会場では女性からの人気が高い。
REALBBQが参画するバーベキュー会場は、1会場1組のみの完全予約制だ。1人あたり4000~5000円程度かかる割高な設定だが、追加で骨付き肉や塊肉を注文する団体も少なくない。福山取締役は「肉ブームの盛り上がりに合わせるように、消費者の好みもより本格化している」と話した。
ビル群の中でジャグジーも
一方、複合型のバーベキュー施設もできている。新宿駅西口から徒歩5分のイタリアンバル「RIZE MIZE」(東京・新宿)は、17年から屋上をバーベキューに利用できるようにしたが、その一角にジャグジーを設置した。田中隆太店長は「ビル群の中で風呂とバーベキューを楽しめる。繁華街やビアガーデンにはない空間作りがカギだ」と話す。オフィス帰りのサラリーマンだけでなく、女子会でも好評だ。
どの会場でも4月からハロウィーンの時期まで利用者が絶えないという。REALBBQのような専門ベンチャーも増えているため、都心バーベキューの裾野は今後も広がりそうだ。
(企業報道部 江口良輔)
[日本経済新聞夕刊2018年6月2日付]
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