本社への異動が大きな転機に

働いていれば、いつかマネジメント力を問われるときがやってくる。神崎さんの場合、2010年11月、本社の生産本部(現生産部)に異動したことが転機になった。

一貫して工場で働いてきた神崎さんにとって、本社勤務は初めて。「あまり試練と感じたことはない」と言い切る彼女だが、この異動時に関してだけは「よくもまあ、女性を据えましたねと思う部署でした」と振り返る。

本社の生産本部は国内工場を統括する役割を担っている。どの工場で何を、どう作るか。それに伴い、いつ、どんな設備を入れるかなどを起案し、それぞれの工場長を通じて現場に下ろす。工場長という強者たちを相手に会社の方針を説明し、彼らを説得しなければならないうえ、営業やマーケティングなど、社内の他部門と交渉しながら進めなくてはならないことも多かった。

国内工場を統括する本社生産本部で磨かれた交渉力が神崎さんを押し上げた

「立場が違うと、考え方も違います。他部門の人たちに、生産の考え方を理解してもらうのは大変でした。新商品の企画一つとっても、それを現場でつくることにどれだけのリアリティーがあるのか、技術的に可能なのかというあたりを詳細に検討しないといけないわけです。それをしたらこれだけのお金がかかりますとか、準備するのにこのぐらいの期間が必要ですとか、こちらが瞬時にイメージできることでも、なかなかわかってもらえないことがありました」

いつしか「武闘派=タフネゴシエーター」に成長

交渉事に強い人間を、社内では「武闘派」と呼んでいる。指折りの「武闘派」が集まる生産本部で醸造のリーダーを勤めあげた実績が、神崎さんを執行役員へと導いた。

その後、キリン株式会社R&D本部酒類技術研究所副所長を経て、15年3月、神戸工場長に就任。工場長として横浜に赴任してきたのは17年3月だ。横浜工場は首都圏の主力工場であり、関東大震災で倒壊した山手工場を引き継いで建設されたという、歴史的重みのある工場。ビオトープやレストラン施設なども配した敷地内で約240人が働いている。

「キリンビールに入社した時点では、まさか工場長になれるとは思っていませんでした。醸造部長にもなれないだろうと思っていました」

誰もが思う通りのキャリアを歩めるわけではないだろう。神崎さんは「醸造をやりたい」と粘り強く希望し続けたことで、チャンスをつかんだ。

(ライター 曲沼美恵)

管理職・ミドル世代の転職なら――「エグゼクティブ転職」

5分でわかる「エグゼクティブ力」
いま、あなたの市場価値は?

>> 診断を受けてみる(無料)

「エグゼクティブ転職」は、日本経済新聞社グループが運営する 次世代リーダーの転職支援サイトです

NIKKEI 日経HR


マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

会社役員・経営幹部の方を対象とした、企業価値を高める経営の実務に役立つビジネス講座を厳選

>> 講座一覧はこちら

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら