ピアニスト山田磨依 美しく香るフランス伝統音楽

「ダマーズはドビュッシーからの伝統的なフランス音楽の流れを引き継いだ貴重な作曲家」と山田さんは説明する。ダマーズが生きた20世紀は前衛的あるいは実験的な作曲手法にしのぎを削る「現代音楽」の時代だ。新ウィーン楽派のシェーンベルク、ベルク、ウェーベルンらの無調や十二音技法から始まり、ブーレーズやシュトックハウゼンの総音列技法(トータル・セリエリズム)、ケージの偶然性の音楽などへと前衛手法が展開していった。

ダマーズから源流のドビュッシーへと遡る

こうした時代背景がありながらも「ダマーズは美しい旋律を損なわず、その中に新しいリズム、複雑に変わる調性を取り入れた」と山田さんは指摘する。現代音楽とは一線を画すが、復古主義ではなく、伝統を踏まえた上で新しい現代の響きを追求した作曲家といえそうだ。

ドビュッシー「喜びの島」を弾くピアニストの山田磨依さん(4月27日、東京都日野市の日野市民会館大ホール)

山田さんは1990年東京生まれ。桐朋学園大学卒業後、フランスに留学し、2015年にパリ地方音楽院最高課程を修了した。全日本ピアノオーディション第1位のほか、仏クロード・カーンコンクールや大阪国際音楽コンクールなどで入賞した。デビューCDもフランス留学の成果という面が出ている。「留学の3年間で学んだことを生かし、CDの前半はダマーズ作品、後半はフランスのドビュッシーとデュカス、そして英国の作曲家エドムンド・ハーツェルさんが私に献呈してくれた作品もアンコールの形で入れた」と語る。

フランス留学の経験も踏まえ、山田さんは温故知新とは逆方向に、現代のダマーズから近代フランス音楽へと遡っていく。「ダマーズはフォーレとラヴェルに尊敬の念を抱いていた。プーランクにも影響を受けたと言っている。そのラヴェルやプーランクが影響を受けた作曲家はドビュッシー」。だからダマーズの音楽はドビュッシーとつながる。

「ダマーズはドビュッシーの『ベルガマスク組曲』をハープとビオラとフルートの編成で編曲したこともある」と山田さんは指摘する。だからこそダマーズの「ソナチネ」には「ベルガマスク組曲」の「パスピエ」に似た旋律が登場するわけだ。「ダマーズはドビュッシーが好きだったはず。ドビュッシーは美しい旋律を持ち、和声感もすごくきれい。この点でダマーズにはドビュッシーに近いものを感じる」。「ベルガマスク組曲」のもう一つの名曲「月の光」の雰囲気も山田さんの弾くダマーズ作品からは伝わってくる。

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