経営・指導者こそ競争が必要 Jリーグ改革終わりなしJリーグの村井満チェアマン(下)

「例えば、クラブごとにホームページをつくってもセキュリティーが脆弱になりがちですし、グッズの通販サイトもクラブが在庫を管理するのは大変です。デジタルプラットフォームをリーグ側で開発し、後はクラブ側でページを更新していくような仕組みをつくりました。クラブは競技に集中してもらい、デジタル投資はこっちでやる。選手の動きを『見える化』するため、軍事技術を転用した追尾システムをスタジアムに導入する試みも進めています」

――一方で、Jリーグから各クラブへの配分金を傾斜させ、護送船団方式から脱皮し、クラブ間の競争を生み出そうとしていますね。

クラブ同士の競争がJリーグの成長に必要だと説く

「Jリーグは各クラブに均等に配分金を支給してきましたが、入場者数や成績などに応じて少しずつ傾斜配分するようにしてきました。さらに17年からはJ1の1位から4位を対象にした『理念強化配分金』も新設しました。各クラブの合意を得る過程で、『反対意見の場合、評論、批判ではなく対案を提示してほしい』など、議論の枠組みを提示してから情報をオープンにして話し合うようにしました」

「内なる競争が最終的には結果を生み出す。ビジネスもそうですよね。競合商品が参入してきたり、海外から競合他社がやってきたり、常に競争にさらされている業態ほどイノベーションを生み出します。逆に規制やルールに守られた独占市場の業態は、相対的に世界との競争に遅れていきます。競争はJリーグ全体の成長に必要なことです」

指導者人材の必要性を痛感

――立命館大学と共同でサッカービジネスの経営を担う人材を教育するプログラムも始めました。監督やクラブ経営者ではどんな人材が求められていますか。

「クラブ経営で相手にするのは生身の人間です。監督が代わったらチームが息を吹き返すこともあれば、何連覇もした監督でも歯車が合わなくて失速するということもある。いわゆる再現性が低い事業です。ビジネスではベストプラクティスなどと言いますが、同じことを別のところでも再現するようなアプローチはサッカーでは全く通用しない。右脳、左脳のみならず、自分をさらけ出す胆力が必要だと思います」

「また、クラブは小なりといえども、地域の公共財として、数千~数万人の移動を生んだり、子供に夢を与えたり、高齢者の健康に貢献したり、国際交流や産業振興も生み出すことがあります。実は日本の地域社会が抱えている行政の大きな課題を克服するポテンシャルを秘めています。社会的な使命感がある人でなければできません」

――監督についてはいかがでしょう。最近はスポーツの世界で指導者と選手の関係を巡る問題が相次いでいます。

「サッカーを教えるだけでなく、人間力を高めていくアプローチが必要です。サッカーは360度どこからボールが来るかわからず、ネットがあって敵味方が分かれているわけでもない。試合中に監督がタイムをとって止められないので、選手が常に自分たちで判断を求められます。しかもサポーターに囲まれ、ときに容赦ないバッシングもある。自立した人間でないと戦えない競技です。こうした人間形成ができるような指導者を育てていく必要があります」

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