2018/5/29

男性幹部・管理職らが豊富な経験と知識に基づき、成長を支えるメンター制度。実は制度を運用する会社では、相談する側の女性(メンティ)のキャリア意識向上に役立つだけではなく、相談を受ける側(メンター)の意識改革も促すとささやかれていた。

厚生労働省は12年にメンター制度について企業調査を実施した。直接的な効果(複数回答)を尋ねた設問で最多は「メンターの人材育成意識が向上」で65.3%に上った。「メンティのモチベーション向上」63.6%、「メンティの職場環境への適応」58.5%、「メンティの知識・スキル獲得」48.3%よりも多かった。

女性活躍に詳しい県立広島大学の木谷宏教授は「人は、人を育てたい感情がある。関わった女性がどうすれば成長するのか。深く考えることで女性が置かれた職場環境と課題に自然と理解が深まる」とそのメカニズムを説明する。

「苦手」なくし積極相談 大阪ガス南部導管部長の池内信司さん

大阪ガス南部導管部長の池内信司さん(51)

大阪ガスは、男性への効果を織り込み、制度を運営している。できるだけ多くの男性に経験させるように人選する。“女性活躍応援団”を社内に増やす戦略だ。4月時点で部長59人中27人が経験者だ。池内信司さん(51)もその1人。昨春部長昇格と同時にメンターを務めた。

30代ワーキングマザーの相談に乗った。飲み会など勤務時間外の付き合いができず、社内の人脈が広がらないと悩んでいた。そのもどかしさは池内さんもよく分かった。入社以来会社のラグビー部に所属し、部を離れる36歳まで職場の飲み会に参加できなかったからだ。代わりに社内会議で同席する相手には事前調整と事後報告を密にするなどして補った。自らの体験を基に時間の制約がある中で成果をどう工夫すればいいか伝えた。

「実は女性が苦手だった。すぐ泣くし、プライベートが仕事に影響する。仲間内では『女性は難しい』と話していた」と苦笑する。でも今は違う。部署250人中、女性は26人。悩みはないか困っていないか。積極的に話しかけている。

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「粘土層」巻き込む妙手 ~取材を終えて~

国が女性活躍推進を掲げて5年がたつ。取り組みが進む一方で、期待通りに改革が進まないと悩む声も企業から聞こえてきた。女性活躍を阻む要因で、特によく聞くのがベテラン男性の意識だ。“粘土層”とも揶揄(やゆ)される彼らは女性活躍に総論賛成各論反対。「女性ばかり昇格させては男への差別だ」「女性登用で営業実績が上がるのか。結果責任を問われるのは俺たちだ」などと会社の方針が職場に浸透するのを妨げる。

解決の糸口はないものか。先進企業に質問を繰り返すなかで、有効策に挙がったのがメンター制度だった。研修などで頭ごなしに意識改革を迫ると感情的に反発する男性たちも、相談相手という役割を与えて当事者に巻き込んでしまうと素直に態度を変えるという。だまし討ちのようで後ろめたくもあるが、男のプライドは傷つけない。同じベテラン男性社員として、その効果が腹にストンと落ちた。

(編集委員 石塚由紀夫)

[日本経済新聞朝刊2018年5月28日付]

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