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オスの体がメスに同化 深海アンコウの奇妙な交尾

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/6/15

ナショナルジオグラフィック日本版

チョウチンアンコウの仲間が深海で交尾をしている、きわめて珍しい光景が撮影された。

映像は海洋科学の振興を目的とするNPO、レビコフ=ニジェレル財団が撮影、学術誌「Science」のオンライン版に公開された。北大西洋の水深800メートルの海中を、ヒレナガチョウチンアンコウの1種であるCaulophryne jordaniのメスが、ゆらゆらと泳ぐ様子が写っている。よく見ると、小さなオスがメスのお腹にぶら下がっている。

このミステリアスな深海魚が生きたまま見つかることはほとんどない。写真家のキルステン・ヤコブセン氏とヨアヒム・ヤコブセン氏は、2016年8月にポルトガル領アゾレス諸島のサンジョルジェ島付近で5時間にわたる探査を行い、その最後に収めた映像を米ワシントン大学水産学部の名誉教授テッド・ピーチ氏に見せた。それから1年以上を経て、この貴重な映像が公開された。

この動画は、合計25分間の映像の一部。メスは握りこぶしほどの大きさで、「鰭条(きじょう)」と呼ばれる線状の組織が周りを取り囲み、光を放っている。Caulophryne jordaniは、博物館などに保管されているメスの標本が世界に14体あるが、生きたオスが目撃されたことはなかった。

チョウチンアンコウ類は、世界中で160種以上が知られているが、深海にすむためその研究は容易でない。ピーチ氏によれば、深海のチョウチンアンコウの生態が撮影されたのは、これがわずか3例目である。

ヒレナガチョウチンアンコウのオスはメスよりずっと小さいが、感度の高い大きな目と鼻を持っており、メスが発する化学物質を探し当てることができる。メスを見つけたオスは、その体にかじりつき、そこからオスの組織と循環系はメスに融合してしまう。メスの血液から栄養を得られるようになる代わりに、オスは目やひれ、歯、ほとんどの内臓を失い、メスが産卵できるタイミングに備える「精子バンク」と化すのである。

科学者らがこの奇妙な交尾行動について知っていたのは、メスの死体とひとつになったオスの死体が発見されていたからだ。深海生物は、水圧や水温の管理が困難なため、実験室ではほとんど生かしておくことができない。

今回の映像からは、風変わり交尾行動だけでなく、ほかの魚には見られない体の詳細な構造も分かった。ほかの魚類では、ひれは一まとまりで動くが、ヒレナガチョウチンアンコウの光る鰭条は、それぞれが筋肉と神経を備え、独立して機能しているように見える。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2018年3月26日付記事を再構成]

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