今の気分でクリーム作り 資生堂スキンケア家電を試す
奈津子の家電選び後輩目線
資生堂から、自分だけの、しかもその日の気分にあったスキンケアクリームを作れる家電が登場した。まだβ版テストの段階だが、テスターには男性もいるという。アイドル、女優として数多くの化粧品を使ってきた奈津子さんが試用した。
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IoTを活用した高効率スキンケア
スキンケアはたくさんの製品があり、口コミなども含めて情報があふれているのにもかかわらず、特に選別が難しいジャンルの一つです。近年では男性向けも増えてきましたが、女性の場合、製品全体の種類がものすごく多いんです。
そこに着目した資生堂が立ち上げたのが、「Optune(オプチューン)」という新ブランド。一人ひとりで異なるもともとの肌質に加えて、外的要因や気分など、その時々で変化する肌状態に細かく対応する「パーソナライズ スキンケア」という新しい概念を打ち出してきたのです。
使用するのは「Optune ZERO(オプチューン ゼロ)」という専用マシンと、「Optune app(オプチューン アプリ)」というスマートフォン(スマホ)アプリ。
利用者はまずOptune appを使い、スマホのカメラを通してアプリ側で肌のきめや毛穴、水分量などのデータを測定します(現状ではiPhone 6s以降のみ対応)。
すると、そのデータと入力した情報を基に、その人に合わせた「Optuneショット」と呼ばれる5本のカートリッジ(美容液3本、乳液2本)が送られてくるので、これをOptune ZEROにセットします。
使うときも、まずOptune appで肌測定を行い、次にOptune ZEROの画面上でその瞬間の「気分」を選びます。気分の項目はBADからGOODまでを6段階にわけたものです。その後にマシンの下部へ手のひらを差し込むと、それぞれ最適な量で調合された美容液と乳液が抽出されるという仕組みです。
Optuneショットの数は公表されていませんが、資生堂によれば「全部で1000種類ほどのパターンからその人に合わせた配合を作り出せる」とのことでした。
肌に吸い込まれていく感じ
アプリで測定してから抽出された美容液と乳液を肌に塗布するまでの所要時間は2~3分程度。抽出は美容液→乳液の順番で別々に出てきます。化粧水のボトルからダイレクトに肌になじませるような、通常のスキンケアほどの手軽さはないものの、イライラしないレベルの時間内には収まっていると思いました。
肝心の美容液と乳液の付け心地は、肌にすっとなじむ感じがとても気持ちよく、1回の分量もちょうどいいです。私はタレントという職業柄、いままで星の数ほどのスキンケア用品・方法を試してきましたが、このOptuneの美容液と乳液はベタつかず、シュッと肌に吸い込まれていく感じがしました。
もちろん何日間も使い続けないと、その成果は判断できません。ただ、この技術自体はこれから精度を高めていくでしょうし、パーソナライズ化されていくスキンケア業界の先駆けになる可能性を持っていると感じました。
いろいろなメーカーの化粧水や美容液をいくつもそろえるより、1つのメーカーであっても「今、この瞬間の肌の状態にジャストフィットさせられる」のであれば、その方がコスパも効率も当然良いですよね。
本来、肌ってストレスが吹き出物となって現れたり、睡眠不足が続けば毛穴が開き、くすんだりするデリケートなもの。大好きな人と一緒にいればツヤめいたりするような気もするし(笑)。自身のライフサイクルや心の状態を反映する変則的な鏡のようなものだと思うんです。だからこそ、このパーソナライズスキンケアの概念は、「スキンケアをする」という行為の根本をついていると感じました。
1カ月あたり7000~9300円
このOptuneですが、まだ一般に広く販売されているものではありません。現在は、公式サイトで利用者を募集し、応募した中から抽選に当選した人だけにβ版を配布している段階。テスターからフィードバックを得ながら、一般販売に向けて準備しているところだそうです(発売時期は未定)。
前述したマシンにセットする5本のカートリッジは1本につき2800円で、だいたい1カ月半から2カ月で消費するペースとのこと。1カ月あたり7000~9300円という金額は、この種の化粧品としては若干高価格帯という印象です。個人的には一般販売される際に、1本2千円ぐらいに抑えてほしいところですね。
増える「あなただけに」と語りかけるサービス
私は芸能界でタレントとしてメディア出演をしつつ、家電ライターとしても日々さまざまな製品に触れているのですが、どちらの業界でも「嗜好性の多様化」が進んでいる印象を受けます。
私自身が経験したアイドルも人数が以前とは比べものにならないほど増えていますし、歯にきぬ着せぬご意見番のMCのような方から、テレビ出演を軸にしなくとも大勢のファンを獲得しているユーチューバーまで、タレントのあり方も、家電の種類のように、ここ数年で本当に多様化したように思います。
同じように「個人のパーソナルなニーズを満たすことに特化したサービス」もいろいろ登場していますよね。
たとえば「airCloset(エアークローゼット)」が提案するパーソナルスタイリング&レンタルサービスは、150人以上のスタイリストがユーザーに似合うとプロ目線でセレクトした洋服をレンタルできます。会員数は10万人を突破しているそうです。AI(人工知能)を活用しユーザーにパーソナルなヘルスケア&ビューティー情報を提供するヘルスケアアプリ「FiNC(フィンク)」は累計130万ダウンロードを突破。またファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」が発表した、ボディースーツで簡単に全身のサイズ測定ができる「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」も話題になりました。
そんなパーソナライズ化の波が、いよいよスキンケアの分野へやってきた。今回、Optuneを試してみて、それを実感しました。
IoTをベースにしたスキンケアの概念は今後ますます広がりを見せるでしょう。私たちは、きっと広大な情報の海のなかで「あなただけに」という切り口で語りかけてくる製品やサービスに、今以上の魅力を感じるようになっていくのではないかと思います。
Optuneのβ版ユーザーには、男性ユーザーもいるそうです(数や割合は教えてもらえませんでしたが)。経済産業省の調査によると「男性皮膚用化粧品」の出荷額は2003年が約120億5500万円だったのに17年は約195億4000万円と、約1.6倍になっています(生産動態統計年報化学工業統計編より)。スキンケアに関心がある男性も増えているのです。ただ「スキンケアには興味があるけど、どうしていいか分からない」も多いと思います。ちょっと高いけれど、自分にぴったりの美容液と乳液を選んでくれるOptuneは、そんなスキンケア初心者の男性にも向いているのかもしれませんね。
女優・タレント。家電製品総合アドバイザー ゴールドグレード(AV情報家電)。元SDN48。特技は茶道、日舞、家電。TOKYO FM「Skyrocket Company」の「家電で快適! 生活向上委員会」コーナー(毎週火曜午後6時ごろ~)にレギュラー出演中。インスタグラムのアカウント名は「natsuko_kaden」
(編集協力 安蔵靖志)
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