やせて筋肉少ない女性に糖尿病リスク その原因は?
最近、日本では女性のやせすぎが問題になっている。極端なやせは、肥満と同様に、さまざまな病気の原因になる。例えば、やせた女性は、太った女性と同様に糖尿病になりやすいことが知られている。なぜそんなことが起こるのだろうか。
順天堂大学大学院医学研究科・スポートロジーセンターセンター長の河盛隆造氏、同センター准教授の田村好史氏、特任助教の染谷由希氏らは、やせている女性を対象に研究を行い、やせていて筋肉の「量」と「質」が低下した女性ほど、高血糖になりやすいことを明らかにした。
閉経後のやせた女性の4割弱が糖尿病予備群
研究には、20代のやせた女性31人と、50~65歳で閉経後のやせた女性30人が参加。20代の普通体重の女性13人、50~65歳で閉経後の普通体重の女性10人も参加した。20代はやせた女性の割合が最も高い年代で、閉経後は糖尿病の発症リスクが高まる年代。「やせ」の基準は、BMI[注1]16以上18.5未満、「普通体重」の基準はBMI18.5以上23未満とした。
これらの参加者について、糖尿病の診断に用いる「75g経口ブドウ糖負荷試験」「体組成の測定」「異所性脂肪の測定」を実施した。
[注1]BMI:体格指数。体重(kg)を身長(m)の2乗で割ったもの。
75g経口ブドウ糖負荷試験は、糖尿病予備群ともいえる耐糖能(血糖値を正常に保つ能力)の異常や高血糖の有無が分かる検査で、体組成測定は骨密度や全身の筋肉や脂肪の量を測定できる検査。異所性脂肪は、本来脂肪がたまることのない組織の中にたまった脂肪のことで、MRI(核磁気共鳴画像)の装置を用いた特殊な方法で計測する。肝臓の中に脂肪がたまった状態は「脂肪肝」、骨格筋の中に脂肪がたまった状態は「脂肪筋」と呼ばれる。
検査の結果、20代のやせた女性の耐糖能異常(糖尿病予備群)の割合は標準体重の女性と差はなかったが、閉経後のやせた女性では、耐糖能異常を示した人の割合が37%に上った。これは同年代の女性における割合(17%程度)より高い数値だった。
筋肉が少なく、「脂肪筋」の人ほど血糖値が高い
さらに、閉経後のやせた女性について、どんな人の血糖値が高いかを調べたところ、インスリンの分泌が低く、筋肉の量が少なく、「脂肪筋」の人ほど血糖値が高いことが分かった。
筋肉はブドウ糖を貯蔵する働きがあるので、筋肉の量が少ないとブドウ糖を十分取り込めなくなると考えられる。また、インスリンには、ブドウ糖を筋肉に取り込んで血糖値を下げる働きがある。「脂肪筋」になって筋肉の質が下がると、インスリンの働きが悪くなり、やはり血糖値が高くなる。筋肉の「量」と「質」が、糖尿病のなりやすさに大きく関わっているというわけだ。
筋肉の「量」を増やすにはレジスタンス運動(いわゆる筋トレ)が、筋肉内の脂肪を燃やして「質」を高めるには、ウオーキングやジョギングなどの有酸素運動が有効だ。また、筋肉量の不足にはタンパク質の不足、筋肉の質の低下には高脂肪食など、食生活の影響も考えられる。適度な運動とバランスのとれた食生活で、筋肉の「質」と「量」を守るよう心がけよう。
(ライター 梅方久仁子)
[日経Gooday2018年5月7日付記事を再構成]
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