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古代日本人も味わった「醍醐味」 チーズの歴史を探る

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NIKKEI STYLE

「醍醐味」という言葉がある。実はチーズから誕生した言葉だということをご存じだろうか。醍醐味とチーズの関係を歴史からひもといてみよう。

チーズとは主に牛乳を発酵させて固めた食べ物のことを指す。良質なたんぱく質や脂肪、ミネラル、カルシウムを含み栄養豊富であるだけでなく、加熱しなくてもそのまま食べられるチーズは忙しい現代人の味方と言える。時間がない朝もパンとチーズを食べれば短時間で栄養補給できる。加熱すればとろーりととろける性質から、交流サイト(SNS)映えを狙ったチーズタッカルビという流行食の立役者ともなった。世界の歴史を遡ると、チーズは今から5000年前にはすでに作られていたとされる。では、日本ではいつ頃から食べられていたのだろうか?

日本でチーズが作られるきっかけになったのは、6世紀に仏教伝来とともに牛乳の加工技術が伝わったことだとみられる。700年ころには、「蘇(そ)」と呼ばれる乳製品が宮中に納められたという記録がある。この「蘇」こそ古代のチーズ、日本最古のチーズと考えられる食品だ。作り方ははっきり分かっておらず、乳を数時間煮詰めて固めたものであるとか、熱した時に表面に張る皮膜を使った湯葉のようなものであるとか、いくつかの説がある。

栄養豊富な牛乳から作った「蘇」は今でいえばサプリメントのようなものだったのだろう。「蘇」は貴族だけが食べることができたぜいたく品だったと考えられ、貴族の間では「食べる薬」として重宝されたという。さて「蘇」はいったいどんな味だったのだろうか。ずっと気にかかっていた私は、奈良で古代の「蘇」を再現した料理が食べられると知り、奈良市内にある「奈良パークホテル」をたずねてみた。

ホテルでは古代料理を再現した「天平の宴」という料理が食べられる。これは平城宮跡から出土した木簡や文献をもとに、古代の宮廷料理を再現したユニークな料理だ。古代チーズのほか、古代のコメや干物、菓子などが多様な古代食が再現されている。ホテル内の「レストラン萬佳」では簡易版のランチメニューも提供されている。こちらでも「蘇」を味わうことができるので、実際に食べてみた。

牛乳を数時間煮詰めて作った「蘇」は、食感はモソモソしているものの、ほんのりチーズの香りがする。なんとも不思議な味わいだ。

ちなみに仏教の経典には、「蘇」と同じものという説がある「生酥(しょうそ)」を加工してできる最上のおいしい食品が「醍醐」と記されている。「醍醐味」とは、この「醍醐」から誕生した言葉だったのだ。

次に世界に目を向けてみよう。世界史をひもとくと、チーズは紀元前2800年にはすでに存在したとされる。動物の胃袋でできた袋にミルクを入れたものが、火のそばで温められているうちに固体と液体に分離していることが発見されたようだ。古代人はここからミルクをチーズ状にして保存できることを知ったのだろう。それから約5000年たった現代、世界には驚くほど多様なチーズがある。

チーズの材料に使われるのは牛乳だけではなく、水牛乳や山羊乳、羊乳、またはそれらを混合したものなどだ。また、同じ牛乳を使うのであれば、材料の味はそう大きくは変わらないはずなのに、作られる地域の風土や製法によって出来上がるチーズの味わいが大きく変わってくるから面白い。

チーズの製法は実に様々で、分類方法もはっきり定まっていない。各国を代表するチーズを挙げても、フランスのブリーチーズやイギリスのチェダーチーズ、スイスのグリュイエールチーズ、オランダのエダムチーズやゴーダチーズと味わいもさまざま。イタリアは水牛乳のモッツァレラや羊乳のペコリーノがよく知られている。

ちなみに私がはじめて世界にさまざまなチーズがあることを知ったのは、学生時代にはじめてフランスを訪れた時のこと。それまでチーズと言えばプロセスチーズしか食べたことがなかったが、パリのスーパーマーケットでチーズ売り場を訪れて驚いた。並んでいたのは大きさも形も色も様々なチーズの山。一体どれを買ったらいいのか全く分からず、当てずっぽうにいくつかを買い求め、ホテルに持ち帰ってバゲットとともに食べ比べた。期待通りに芳醇(ほうじゅん)な味のものもあれば、あまりにも匂いや味が強烈で全く舌が受け付けないものまであった。

特においしかったチーズは現地の人に連れて行ってもらった店で、デザート代わりに出てきたフロマージュブランだ。名前のとおり白いチーズで、爽やかでまるでヨーグルトのような味がする。はちみつをかけて味わった感想は「えっ、これもチーズなの?」とびっくりした。このように、一口にチーズと言っても実に様々なのだ。

時は流れ、今やデパ地下やスーパーでも色々なチーズが並ぶようになった。それでもやはり、チーズといえばプロセスチーズを連想する人が大多数ではないだろうか。では、日本でプロセスチーズが主流になったのはなぜなのか。そこにもちゃんと理由があった。

プロセスチーズはナチュラルチーズとは作り方が違う。ナチュラルチーズは牛乳や山羊などの乳に、乳酸菌や凝乳酵素を加えて凝固させ、ホエイ(乳清)を取り除き、乳酸菌やカビなどの力で発酵させたものだ。一方、プロセスチーズは熟成したナチュラルチーズを1~数種類を加熱かくはんし、味を整え加熱殺菌してから固めたもの。もともとは余ったチーズを保存する目的で開発され、20世紀に入ってから作られるようになった。加熱殺菌することで酵素の働きが弱まるため、長期保存できることが特徴だ。

日本では「蘇」がいったん姿を消し、1800年代の明治時代になってから北海道開拓庁によってチーズの試作がはじまった。1900年代に入ると、国内でも少しずつチーズが作られるようになるが、この頃はまだごく一部の上流階級のぜいたく品にとどまっていたようだ。

プロセスチーズが一般の人にも広く消費されるようになったのは戦後のことだ。栄養バランスにすぐれ、加熱しなくても食べられるプロセスチーズは米軍の携行食として用いられたことも、日本での普及を後押ししたようだ。終戦後のヤミ市で駐留米軍から放出された物資が販売されるようになると、プロセスチーズもその1つとして徐々に広まっていったという。

初めて経験する食べ物を食べる時、どんな味がするのか想像しながら味わうのはなんとも楽しい。世界中に驚くほど多くの種類があるチーズなら、まだ食べたことのないものに出合える可能性も高いはずだ。古代のチーズや世界のチーズなら、きっとあなたに未知のおいしさを体験させてくれるに違いない。

(日本の旅ライター 吉野りり花)

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