週末レシピ 人気のサラダチキン、炊飯器で簡単調理
この週末はコンビニエンスストアでおなじみの「サラダチキン」を手作りしてみよう。サラダチキンとはサラダに入れるためにあらかじめ味つけして蒸した鶏ムネ肉のこと。低カロリー、しかも高たんぱくでボリュームもある。調理することなくそのまま食べられる。
ご飯やパンなどの炭水化物を極力減らし、そのぶんのカロリーをたんぱく質で摂取する「低糖質ダイエット」(炭水化物ダイエット、ローカーボダイエットとも呼ばれる)の流行とも相まって大ヒット商品に。コンビニのセブン-イレブンが火付け役となり、今ではどこのコンビニでもスーパーでも手に入るようになった。
低カロリーであるという鶏ムネ肉の利点は、「脂分が少ないため食感がパサパサになりがち」というマイナス面の裏返しでもあった。それゆえ鶏ムネ肉はスーパーでも売れ残ることが多い食材だったという。ヘルシーというだけでなく、パサパサになりがちなムネ肉をしっとりとおいしく食べられるようにしたこともヒットの要因のひとつだと思う。
スーパーで売れ残りがちだからだと思うが、鶏ムネ肉は鶏モモ肉に比べて値段も安い。つまり、「しっとり食感」に仕上げることさえできれば、コスト的にも自分で手作りするメリットは大きいというもの。もちろん、手作りであれば味つけもサイズも自分好みにカスタマイズできるという良さもある。
で、この「しっとり食感」に仕上げるポイントは、2つある。
1つは「低温調理」だ。これは主に肉を加熱するときに加熱温度を60~70度程度の低温に保ったまま時間をかけて行なう方法のこと。
たんぱく質は60度前後で凝固が始まり、そのまま温度を上げて加熱していくと凝縮し、硬くなる。フライパンで牛肉をソテーする、焼き鳥を炭火で焼くなどはこの性質を利用し、短時間で高温加熱することにより表面のたんぱく質を凝固させ、肉汁やうま味を閉じ込める調理法である。
逆にたんぱく質は低温で長時間加熱すればこの凝固が起こらず、軟らかいまま。肉汁もうま味も肉に残ったままでジューシーに仕上がる。長時間かけてじっくり調理するので、味も中まで浸透しやすい。最近では家庭用低温調理器も販売されているくらい、ポピュラーな調理法になってきた。
とはいえ、お安い鶏ムネ肉を使っておトクに作るために低温調理器を購入するのは本末転倒というもの。そこで今回は「炊飯器」を使うことにしよう。炊飯器の「保温機能」は70度程度なので、低温調理にもってこいなのだ。
そして、もう1つの「しっとり食感」に仕上げるポイントは「砂糖」である。砂糖にはたんぱく質の凝固を抑えるという働きがある。味つけ段階で肉に砂糖をまぶすことで肉が硬くなるのを防げる。
ただ、低温調理だけでもかなりしっとりと仕上がるので、ストイックな糖質制限をしている人は入れなくても可。
では、さっそく作り方を紹介しよう。
<材料>
鶏ムネ肉 1枚 / 市販のハーブソルト 小さじ2杯 / 砂糖 小さじ1杯 / ジッパー付き食品保存袋(加熱OKのもの) 1枚
(1)鶏ムネ肉に皮がついていればはがして、火が通りやすいように鶏ムネ肉を半分の厚さにそぎ切りする。
(2)味がよくしみこむように肉にフォークで穴をあける。
(3)ハーブソルトと砂糖をまんべんなくまぶす。
(4)食品保存袋の中に入れ、できるだけ中の空気を抜く。
(5)袋を炊飯器の中に入れ、袋が隠れるくらいまで熱湯を注ぎ入れ、保温モードにする。
(6)2時間ほど保温したら炊飯器から取り出し、あら熱を取り、冷蔵庫の中で冷やす。
レストランなどプロの調理人が低温調理をする場合、肉を真空パックにして調理することが多い。空気は水よりも熱の伝導率が悪い(45度のお風呂は熱くて入れないが、90度のサウナは入れるのを考えると分かるだろう)ので、熱を伝わりやすくするためには空気をなるべく入れないのが望ましい。
それに袋が真空状態でピタッと肉にくっついていれば調味料がよくしみこむし、肉汁も出にくい。でも、家庭には真空パックにする機械はないので、今回はジッパー付きの食品保存袋で代用した。できるだけ空気を抜いて使うようにしよう。
また、今回はコンビニのサラダチキンを意識して皮を取って調理した。特にカロリーが気にならない人は皮付きのまま調理するといいだろう。焼き鳥屋さんでわざわざ皮を注文するほどの皮好きさんなら、こちらのほうがおいしいと感じるはずだ。
逆に厳しいカロリー制限をしなくてはならないアスリートは鶏のササミで作るという手もある。
味つけもは最も簡単なように乾燥ハーブやスパイス入りの塩を使ったが、生のパクチーやバジルを刻んで入れたり、しょうゆを加えてみたりとアレンジもさまざま。塩こうじや塩レモンなどを入れてもみこむのもアリ。コンビニのサラダチキン同様、いろいろな味つけが可能だ。
次に自家製サラダチキンを使って簡単アレンジ料理に挑戦しよう。そのまま食べてもいいし、本来の用途通りにサラダに入れてもいいが、料理の素材としても使える。
「棒棒サラダチキン」はキュウリを千切りにし、手で割いたものを乗せるだけ。市販の棒棒鶏(バンバンジー)ソースやゴマドレッシングなどをかければできあがり。ノンオイルドレッシングをかければダイエット中の人もカロリーをそれほど気にせず食べられる。
種を取って軽く包丁で叩いた梅干しと手で割いたサラダチキン、お好みの野菜を和える。三つ葉やオクラ、スライスしたタマネギなどもおススメ。
「サラダチキンの梅和え」は、サラダチキンを食べやすい大きさに切り、皿に並べる。みじん切りのタマネギにポン酢とゴマ油を加えたものをかける。お好みでトウガラシや七味トウガラシを加えても。
低温調理した際、食品保存袋に少々の肉汁が出てくる。これも無駄にすることなくいただこう。袋に残った鶏の肉汁をカップに移し、塩・こしょうを少々、乾燥ワカメ、ネギを加え熱湯を注ぐ。簡単スープのできあがり。
サラダチキンを好んで食べる人はおそらく低糖質の食生活をしている人が多いと思うので、炭水化物抜きのアレンジメニューをご紹介してみた。糖質が気にならない人は中華麺をゆでて冷やした上に「棒棒サラダチキン」を乗せたり、サンドイッチの具にしたりなどのアレンジもできる。
さて、作る上で、いくつか注意点がある。
■食中毒を起こす細菌を死滅させるために加熱の温度をしっかり管理すべし
東京都の調理実験では肉の中心温度が65度になれば食中毒を引き起こすカンピロバクター細菌が死滅するとしている。
「鍋にお湯をわかして鶏肉を入れ火を止めて放置」という方法で作っている人もいるが、この方法だと低温加熱の温度が下がりすぎても分からないので、やや心配だ。炊飯器ならば70度にキープする機能があるので、こちらの方法をおススメする。
また、鶏ムネ肉の厚さを半分にそぎ切りすることで、肉の中心までしっかり火を通りやすくした。
■調理後はすばやく冷やし、冷蔵庫へ
食中毒の原因菌は30~40度で繁殖するものが多いので、この温度で長時間保温状態になってしまうのは非常に危険。
炊飯器の保温スイッチを切って余熱で調理しようなどとは思わないこと。2時間低温調理したら袋ごと水につけるなどしてあら熱をとって冷蔵庫へ。
■コンビニのものほど日持ちはしないと心得て
コンビニやスーパーのものは真空パックになっているので賞味期限が比較的長い。手作りしたものは冷蔵庫で保存し、3~4日ほどで食べ切るようにしたい。大量に作る場合は食品保存袋に入れたまま冷凍庫で保存しよう。
以上である。これからの季節、食中毒が多くなるので、くれぐれも気をつけていただきたい。手作りサラダチキンはびっくりするほど簡単にできてしまう。しかも、ふっくらジューシーでうまい! 是非トライしてみて。
(ライター 柏木珠希)
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