肉のいぶし焼きに動画映え鍋 18年の外食ヒット予測
百花繚乱、トレンドが生まれては消える外食業界において、18年のヒットを占うキーワードは4つある。
1つ目は「掛け算の調理法」。特に好調が続く肉業態では、従来とは異なる調理法を取り入れることで新鮮味を与え、差別化を図る傾向が見られる。
なかでも注目なのが「ウッドプランク・グリル」と呼ばれる手法だ。木の板をグリル台や、じか火に置いた網に載せ、その上で肉をいぶしながら焼く。桜の木などを使うことで、肉に燻製特有のスモーキーな香りが移るのが特徴だ。米国で話題の調理法で、日本でも17年11月からヒルトン東京のレストラン「メトロポリタングリル」が桜の板を使った桜ウッドプランク・グリルのメニューを提供。自宅では味わえない、外食ならではの料理といえる。
2つ目のキーワードは「動画映え」。インスタ映えの延長線上で、注目度急上昇中なのが動画映えする食べ物、いわゆる「ムービージェニックフード」だ。バタフライピーというハーブを使った青いドリンクは、酸性のものを加えると赤や紫色に変わる様子が「動画で見せたくなる」と話題を呼ぶ。火にかけた後、温度が上がるにつれて具材の形や汁の色が変わったり、メレンゲが膨らみドーム状になったりする「動画映え鍋」も、SNS時代にヒットする外食メニューの好事例だ。
インスタ映えフードも依然として人気を集める。スイーツやベーカリー業態では17年以降、鮮やかな七色が目を引くレインボーカラーのスイーツやベーカリーがインスタ映えすると話題に。東京・麻布十番にある「ニューニューヨーククラブベーグル&サンドイッチショップ」では、週末になるとレインボーカラーのベーグルを求めて開店前から客が列をなす。切った断面が七色の層になっているケーキや、淡い虹色をした綿あめなども若い女性を中心に根強い支持を得ている。
3つ目のキーワードは「地方回帰」。引き続きのトレンドワードだが、「地方の食文化を背景に持つ、ストーリー性のある料理が人気を集めている」(ホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリストの竹田クニ氏)。
例えば、「ご当地焼き鳥」として人気急上昇中なのが鶏皮焼き。ここ数年、博多天ぷらの店がヒットしていたが、鶏皮焼きも博多が発祥のソウルフードだ。焼き鳥の串に鶏皮を隙間なく刺し、しょうゆ系のタレに漬けて焼き、寝かせるという作業を数日間繰り返して作る。食材、味、手法すべてに特徴がある焼き鳥だ。
この鶏皮焼きを提供する飲食チェーン店が今、首都圏のみならず全国で増殖中。「博多かわ屋」は4月だけで富山、静岡、愛知に新店をオープン。都内に6店舗を運営する「博多とりかわ長政」も、5日かけて仕込んだ「博多とりかわ」(税別190円)を目当てにビジネスマンが連日足を運ぶ。
鶏皮を使ったアレンジメニューで攻勢をかけるチェーン店も。タレを付けた鶏皮串を高温で揚げた「伝串」を看板料理に据える「新時代」は、愛知と東京で店舗数を拡大中。鶏皮を使った居酒屋メニューは今後も増えそうだ。
「健康志向」も、依然として外食ヒットを占うキーワードの一つ。レモンサワーに続き、今年、きっと来るアルコール飲料として注目なのが茶割りだ。
茶割りとは、焼酎や泡盛などのアルコールを、煎茶や玄米茶などで割った飲料のこと。蒸留酒を使えば糖質オフになるのはもちろん、多彩なバリエーションを用意できるのも魅力の一つだ。20年の東京五輪に向けて、ジャパニーズカクテルとして打ち出せる可能性も秘めている。
健康志向は食材にまで広がりを見せる。牧草を食べて育ったグラスフェッドビーフは、穀物で育てた牛肉よりもオメガ3脂肪酸が豊富なうえ、赤身の割合が多くヘルシーと話題に。カカオ豆を使ったスーパーフード・カカオニブも、高濃度のポリフェノールを含むとしてヘルシー志向の人を中心にニーズの高まりが期待される。
【そのほかの注目メニュー】
●猛烈バーガー
ハンバーガーはボリューム全盛期に突入。マクドナルドは今年3月、100円追加でパティが2倍になる夜マックを開始。ロッテリアは4月にパティを2枚使った商品を投入した。海外勢も、4月に東京・渋谷に米国ロサンゼルス発の「FATBURGER」が日本初上陸するなど攻勢をかける。
●ネオ一人鍋
鍋も自分好みの仕様で味わう―。ダシからタレ、具材まで、周囲に合わせることなく好きなものを選んで食べる鍋が、嗜好の多様化と相まって広がりを見せる。17年11月に開店した東京・中目黒のしゃぶしゃぶれたすでは、客ごとに1つの鍋を提供し、自分のペースで味わうしゃぶしゃぶのスタイルを提案。
●盆栽パフェ(台湾スイーツ)
台湾ではすでにブームとなった盆栽風のデザートが日本に上陸し、スイーツ業界のトレンドの一つになっている。インスタ映えスイーツを求める若い女性層はもちろん、訪日外国人客の需要も見込めるとメニューに加える店が出てきている。
●変形アフタヌーンティー
インスタ映えするアフタヌーンティーが熱い。アマン東京のザ・ラウンジbyアマンでは、トレーや皿、カップ、カトラリーなどのテーブルウエアを黒で統一した「ザ・ブラックアフタヌーンティー」が大人気。
コンラッド大阪は、期間限定の抹茶を使ったアフタヌーンティーで差別化を図る。
[日経トレンディ2018年6月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。