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庭崎紀代子・セイコーウオッチ取締役執行役員

庭崎紀代子・セイコーウオッチ取締役執行役員

管理職として活躍する女性が仕事やプライベート、働き方への思いを自らつづるコラム「女性管理職が語る」。10人の女性管理職が交代で執筆します。今回は、セイコーウオッチ取締役の庭崎紀代子氏です。

◇  ◇  ◇

入社時の新人研修や管理職向けセミナーなど、会社員としてのステージに沿った人事研修のカリキュラムを当社でも実施している。最近では若手社員数人のグループを一定期間、海外に派遣。テーマの設定から現地でのリサーチ、報告までを課すことで自主性を強化するグローバル要員育成研修など、新たなアプローチの研修プログラムも導入した。

国内勤務の若手社員が突然投げ込まれた海外でがむしゃらに歩き、調べ、チームでまとめたリポートの報告会を実はとても楽しみにしている。というのも、私自身「現場に出す」ことが若手社員にとって何よりも有効な育成方法だと信じているからだ。

セイコーのメインストリームである時計ではなく、宝飾品・アクセサリーを扱うジュエリー事業部に入社した私は、1年目からライセンス商品担当として、海外ブランドなどを相手に一人での交渉を任された。

アプローチしたファッションデザイナーには、ニナリッチや島田順子さんなど、いま考えれば新人社員が直接お話しするのは果たして適切だったのか、と心配になるビッグネームの方々もいらっしゃった。

当時は怖いもの知らずで、まさに当たって砕けろの気持ちで取り組み、ハードルが高い課題を任されるほど、それをやり遂げていくことが自信につながった。そして皆さんにたいへんかわいがっていただいた。

こうした現場主義を若い時代の自分がくったくなく受け入れられたのは、おそらく我が家の教育方針が根底にあったからではないかと考えている。子供3人のうち娘は長女の私1人。普通なら過保護になってもおかしくない状況だが、両親の考え方は違った。

父の仕事の関係で海外とのつながりが多かったこともあるのだろう、とにかく、幼いころから自主性が求められた。思い起こせば、小学3年生の10歳にも届かないころ、オーストラリア在住の叔父の家に行くことになったとき、両親は「じゃあ、いってらっしゃい!」と私を一人で羽田空港から送り出した。

また、家族でのレストランでの食事では、「メニューをみて自分が好きなものを選びなさい、人と同じというのはだめだよ」と言われた。小さなことだが、自分で判断し選択するという訓練になったことは間違いない。

自分でやってみることで、「まあなんとかなるだろうな」という根拠のない楽観性を、そして自分で解決する自主性を両親の教育方針の積み重ねで私は身につけていったのだろうと思う。何においても、とりあえず自分で考えて組み立てるという「くせ」は国内や海外旅行をするようになってからも、自分の行動規範のベースになっている。

計画的な研修プログラムを否定するつもりはないが、自分の経験から若い社員ほど無理にでも職場内訓練(OJT)、つまり現場に出してしまうようにしている。

現場での体験はその後の仕事に必ず生きてくる。そして彼らが年長者になったとき、同じように若い人を現場に送り出せるよう、人が育つ職場風土を作っていくことが必要であると信じている。

にわさき・きよこ
 日本女子大文卒、服部セイコー(現セイコーホールディングス)入社。ライセンスジュエリーを担当。2001年にセイコーウオッチに異動。15年取締役執行役員。

[日経産業新聞2018年4月26日付]

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