復活「オー人事」CM好感度上昇 外国人上司も登場
2018年3月度 CM好感度月間ランキング
CM総合研究所が発表する3月度の銘柄別CM好感度ランキングで、人材総合サービスのスタッフサービスが7位にランクインした。1997~2004年まで放送された「オー人事」シリーズのCMをリバイバルさせた、現代の職場での理不尽な出来事を描く新作だ。40代を筆頭に高いCM好感度を得て、04年4月度以来のトップ10入りを果たした。
97年に初めて放送されたオー人事のCMは、「上司や職場に恵まれなかったら、022(オー人事)022(オー人事)」というフレーズに加えて、チャイコフスキー作曲の『弦楽セレナーデ』の旋律が話題を集めた。
それが昨年、放送開始から20年という節目を迎えたことでリバイバル。まず10月にウェブで新作5篇を配信。そのうち2篇を12月~18年1月にCMとして放送。続いて、2~3月にかけて「セキュリティ」篇などの新作6篇をオンエアした。
スタッフサービス・ホールディングス広報部ゼネラルマネージャーの森千晶氏は、リバイバルの狙いをこう語る。「オー人事のCMは、職場や職場での付き合いの中で起こる『あるある』シーンを描いてきました。この20年で働く環境は大きく変化しましたが、職場でのミスマッチは変わらず存在しており、当社が今も変わらずそれに向き合っていることを伝えたいと考えました」
制作にあたっては、過去シリーズの「ありえない! …とは言いきれないかも」というフォーマットは残しつつ、インスタ映えを意識した客に店員が振り回される「試着」篇や、外国人上司が指示を根底から覆す「ちゃぶ台」篇など、交流サイト(SNS)やグローバル化といった今の職場環境を反映させた。職場はオフィスに限らず、アパレルショップやオーケストラなどバリエーションを広げた。
前シリーズを継承して、キャストに有名タレントは起用せず、撮影もCGなどを使わず実際に撮影したという。会議が白熱すると椅子の脚が伸びる「意識高い系」篇の椅子は人の手で動かしており、コンサート本番で指揮者が演奏を始めない「オーケストラ」篇では楽団が実際に演奏している。「ちゃぶ台」篇ではちゃぶ台がきれいにひっくり返ることや紙が美しく舞い散ることにこだわり、何回も撮影を繰り返した。
CM好感要因を見ると、最も票を集めたのが「ユーモラス」で、「ストーリー展開」「宣伝文句」「音楽・サウンド」と続く。CM総研の関根心太郎代表は、「社会風刺の面白さですね。働き方改革が進められているなかで、実際に働く人たちの意識とのギャップをつく、絶妙な落とし加減が受けています」と分析。「支持層で一番高いのは40代の男女。以前のシリーズを知っている人たちからは『懐かしい』という声が多く、一方で初めて見る10代20代の若い人からは『面白い』という感想が寄せられています。両方の世代から支持されているのが、高いCM好感度につながっています」とみている。
スタッフサービスでは、CMを放映した1~3月の時期に合わせ、ラジオ、新聞広告、交通広告、LINEアカウント開設、ウェブでの配信などオールメディアでキャンペーンを実施。全国で事業展開をしているため、交通広告ではご当地ネタを取り込んだ「職場あるある」を付箋に手書きするデザインを採用した。また、気軽に「オー人事」の世界観に触れてもらう工夫として、SNSを利用して「送られてくるとオー人事したくなるスタンプ」をプレゼントしたところ、350万以上のダウンロードがあった。
CM総研の関根代表は、「CMが始まった20年前とはメディア環境も変わり、SNSなど複数のメディアを組み合わせた今日的なコミュニケーションに進化しているのも注目したい点です。その中心にあるのがCMの強いフレーム。職場でのミスマッチを描くストーリー、『022(オー人事)022(オー人事)』のフレーズ、チャイコフスキーの音楽というフレームは変えず、今の時代の働き方や社会情勢を設定に反映させることで、様々な展開が広がりました」と言う。
各業界で人手不足が深刻化するなか、求人系CMのオンエアは増え、CM好感度も上がっている。3月度のランキング全体を見ると、5位にリクルート、6位にIndeed Japan、7位スタッフサービスとトップ10に3社が入った。リクルートのタウンワークは松本人志のタレントパワー、Indeedは替え歌の連呼とバリエーションの多さで認知度を上げるなか、スタッフサービスは過去のヒットCMシリーズのリバイバルを成功させて存在感を高めている。
(日経エンタテインメント! 小川仁志)
■当月オンエアCM:全2589銘柄
■東京キー5局でオンエアされたすべてのCMを対象に、関東在住の男女モニター3000人に、好きなCM・印象に残ったCMをヒントなしに自己記述してもらい、その得票数を足し上げたもの
■同商品の複数作品にオンエア・好感反応がある場合、代表作品は最もCM好感度の高い作品
■企業・銘柄名・作品名はCM総合研究所の登録名称であり、正式名称と異なる場合がある
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