女性同士の嫉妬から抜け出す 心がラクになる処方箋
学生時代は成績や周囲からの人気度、社会人になれば勤務先にキャリア……たとえ仲の良い友達であっても、女性は時として嫉妬心にさいなまれることもあります。「嫉妬」に関する読者アンケートを紹介しつつ、その解決法を精神科医の水島広子さんに伺います。
女性の嫉妬はけっこう根深い
「嫉妬」という字はどちらも女偏の漢字。それほど女性と嫉妬は切っても切れない関係にあるのでしょうか。日経ウーマンオンライン上で「女性同士の嫉妬にはどのようなものがあるか」を尋ね、その解決法を精神科医の水島広子さんに伺いました。
やはりパッと見て目に入るからでしょうか、「容姿やスタイル」がトップに挙げられました。さらに「上司や社内での評判」はもちろんのこと、「彼氏(夫)の有無」だけではなく、「彼氏(夫)の肩書きや収入などのスペック」も気になるし、「育った環境」や「学歴」「交友関係」とキリがありません。
「その他」の回答では「現在の生活レベル」「社内での飲み会に誘われるかどうか」「子どもがいれば、子どもの学歴や部活での大会成績」といった意見もありました。
確かに他人のこうした部分が目に付くときもありますが、これでは女性はどんな環境にいても、何歳になっても嫉妬に悩まされることになってしまいます。水島さん、どうしたらよいのでしょうか?
◎日経ウーマンオンライン上で読者を対象に実施
◎調査機関:2017年2月7日(水)~2月28日(水)
◎有効回答者数:256人
「悪口」「噂話」も嫉妬の一種
「女性がほかの女性に嫉妬してしまうのは仕方がないんです。というのも、女性は長らく『男性に選ばれる性』でした。現代では本当にナンセンスですが、男性が『課長』や『部長』とストレートに評価されるのに対し、女性は『課長夫人』『部長夫人』と『どんな男性に選ばれたか』によって価値が決まってしまう時代がありました。他の女性が自分より条件のよい男性に選ばれないようにするためには、抜け駆けを許さず、つねに見張っておく必要があります。だから女性は他の女性を観察してしまうし、それによって嫉妬心もかきたてられてしまうんです」(水島さん)
また、オフィスや女性グループにありがちな「悪口」「噂話」も、実は「嫉妬の一種」だそうです。
「本当にはその相手に嫉妬しているけれど、あからさまに言うのは自分でも恥ずかしい。そんなときに『あの子って、人と接するときに裏表があるよね』『要領だけはいいよね』などと悪口を言って、相手をおとしめようとする……皆さんも、そんな女性に会ったことがあるのでは?」(水島さん)
なるほど、女性が嫉妬してしまうのは「仕方がないこと」なんですね。では、「自分が嫉妬の標的にされそうな場合」と「他人に嫉妬してしまう場合」の対処法を教えていただきましょう。
自分が嫉妬の標的にされそうな場合は、「女度」を下げる
自分では普通にしているつもりなのに、なぜか同性から好かれない。目の敵にされてしまう。そんなときは「『女度』の高い態度を取っていないか、見直してみて」と水島さんは言います。
「女度」とは、他の人に嫉妬する、人と誰かを比べたがる、すぐに群れたがる……こういった女性にありがちな「イヤな部分」が前面に出てしまう状態を言います。
「嫉妬の対象とならないためには、自分は同じ土俵に立つ『女』にならず、『女度』を下げることが肝心です。例えば、自分も一緒になって悪口を言わない、少しでも相手を挑発するような言動を取らない、人によって接する態度を変えないなど、『女性がやってしまいがちな態度』を取らないようにすると効果的ですよ。また、嫉妬してくる相手に対しても、『この人は女性特有のパターンにはまって行動しているだけなんだ』と理解してあげられれば、寛容さを持てたり、気の毒に思えたりする余裕も生まれます」(水島さん)
人目ばかり気にして、窮屈な毎日は息がつまる! という人は、「天然キャラ」になり切ってしまうのも、一つの手だそうです。職場の女子で連れ立ってランチに行くと、誰かの悪口大会になってしまうことも。そんなときは「私って、こういう人だから」「私って天然だから、よく分からないんだ」などと、相手をけむに巻いてしまいましょう。
「のれんに腕押しのような態度を取っていれば、『女度が高くない』『ライバルではない』と認定され、いつしか相手から嫉妬されなくなりますよ」(水島さん)
心に嫉妬が渦巻いたら「明るい嫉妬」にシフトチェンジ
自分がどうしようもなく、誰かに嫉妬してしまうとき。嫉妬されるのもつらいけれど、胸中に嫉妬が湧き上がるのも苦しいですよね。でも、「その感情にフタをしなくても大丈夫」だと水島さんはいいます。
「自分の好きな人と誰かが結婚したら、それはショックだし、くやしいし、嫉妬するのは当たり前です。そんなときは友達に愚痴ってもいいし、ヤケ酒を飲んでもかまいません(笑)。無理に笑顔をつくって、おめでとうを言う必要もありません。『大人の女性なら、ここは笑顔で祝福しなくては』と自縄自縛になるから、余計につらくなるんです」(水島さん)
実は、嫉妬は「驚かない限りは起こらない」もの。たとえば、友達のきらびやかなSNS投稿を偶然見てしまった、ライバルの昇進を人づてに聞いたなど、「不意の出来事」や「サプライズ」が起こったときに、より強く嫉妬を感じてしまいます。
いつも職場にいる人が気になる場合も、「今日は新しいバッグを持っている」「今日もきれいにお弁当をつくっている」などと、小さな驚きに反応してしまっているパターンが多いといいます。
「嫉妬で苦しくなりそうなときは、『今、私は驚いて、ショックを受けてしまっているんだ』と、自分をいたわってあげてください。寝込むほどのショックは1カ月、胸が痛むぐらいのショックは3カ月もあれば立ち直れます。そうやって十分に自分の傷が癒えてから、『いいなあ、羨ましい』『私も早く結婚したーい』と明るくサラッと言えばいいんです」(水島さん)
嫉妬は心の中に重く、ねっとりと蓄積していくから苦しくなる。それを「嫉妬するのは仕方ない」と開き直り、明るくこまめに発散できたら、ずいぶん生きやすくなりそうです。
「彼氏との関係でも、こっそりスマホをのぞき見するよりも、『カッコいいから、誰かに取られそうで心配なの』『私は嫉妬深いんだから気を付けてね』なんてヤキモチを焼いたほうがかわいいですよね。嫉妬が持つ負のパワーを、明るく転換できるよう工夫してみてください」(水島さん)
(ライター 三浦香代子、イラスト 六角橋ミカ)
精神科医、元衆議院議員。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、衆議院議員として児童虐待防止法の抜本改正などに取り組む。主な著書に10万部を超えるヒットとなった「女子の人間関係」(サンクチュアリ出版)、「女に生まれてよかった。と心から思える本」(朝日新聞出版)などがある。
[nikkei WOMAN Online 2018年4月11日付記事を再構成]
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