鈴木京香さんがお手本? 魅力的な女性上司の条件とは
2018年4月期のドラマがスタートしました。今クールも話題作が目白押しですが、なかでも私が注目しているのは、波瑠さんと鈴木京香さんがタッグを組んだ刑事ドラマ『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレビ朝日系)です。
女性の年の差コンビが主人公
刑事コンビのドラマと言えば、これまで『相棒』シリーズを始め、男性の年の差コンビが王道でしたが、『未解決の女』は女性の年の差コンビ。これを新鮮に感じた方も多かったのではないでしょうか。でも現実の世界では女性上司に女性部下が当たり前になってきたのですから、こうしたドラマ自体が登場するのも必然なのでしょう。脚本は『あさが来た』の大森美香さんで、やはり女性です。上司と部下の言葉のやりとりにも女性ならではのニュアンスを期待してよさそうです。
このドラマは、波瑠さんが演じる肉体派の熱血刑事と、鈴木さんが演じる頭脳派の冷静な刑事がコンビとなって未解決事件を解決していく物語。どの職場でも、仕事の場面で20歳近い年の差がある女性同士となれば、価値観も合いにくく、ふとしたことで摩擦も生じやすいものです。
実際、このドラマの中でも、二人の性格の不一致ぶりや衝突するシーンが出てきます。ですが、自身にはない能力を互いに認め合う姿勢が物語全体から伝わってくるなかで、こんな同性同士の上司と部下のコンビがいたらすてきだなぁ……というふうにも思えてきます。
初回でも、鈴木さんが演じる冷静な文字のエキスパートが、波瑠さんが演じる強行犯係出身で正義感と直観を武器に奔走する熱血刑事をここぞというときにサポートし、援護射撃する場面が印象的でした。
ある種の理想的な先輩・後輩の関係性が垣間見える新生・名コンビの誕生といえるのかもしれません。
このお二人の場合、仕事人としての実力もさることながら「上品でしんが強いイメージ」が、共通点であり、同時に同性からの支持が高い印象があります。特に鈴木さんに関しては、年を重ねるごとに大人の品位と色香が増していて、私の周りの女性たちに聞いてもウェブサイトを見渡しても、鈴木さんを嫌いな女優として挙げているのを見たことがありません。この鈴木さんが持ち合わせている大人としての品位というのはおそらく、ビジネスシーンにおいて部下が理想的な上司に求める要素でもあるのではないでしょうか。
そもそも品位とは、持って生まれたような人もいますが、常日ごろの習慣や心がけから養えるものでもあります。
例えば、一般のビジネスシーンにおいても、多忙であることを理由に部下とのやりとりを怠っていたり、身なりも気にせず、着る服も手抜き状態となったりしては、品位どころか信頼を置かれることすらないでしょう。
また、しんの強さというのも、上司が部下から信頼を得る重要な要素です。様々な業務やプロジェクトにおいて、初志貫徹の精神、ブレない軸を持っている姿勢こそが、同僚や部下たちからの信頼感につながります。
さらに女性同士である場合には、憧れる要素があるかどうかも互いをリスペクトし合う要因の一つといえるのかもしれません。
女性上司はロールモデルになれるか
憧れる要素とは、凛(りん)とした美しさがあるのかどうかもその一つ……。それはモデルのようなルックスであるかどうかという意味ではなく、自分の上司として取引先や顧客と対面する際に、「どこに出しても恥ずかしくない」というたたずまいと振る舞いを持ち合わせているかどうかということになります。
憧れる上司をイメージする際、男性の場合はそのポジションだったり、仕事哲学や賢明さ、人間性などといった職業人としての部分をフュ―チャーして考えがちですが、女性の場合は少々違ってきます。
職業人としての能力の高さ、人間性についてはもちろんのこと、女性としてきらめいていれば「将来はああなりたい」という憧れが増すものなのです。そういう意味で部下や後輩たちのロールモデルとして期待が高いのだと思います。
品位あふれる美しさというのは、小手先のテクニックでは出せないものであり、基本的には清潔感が漂い、自分に正直でいながらもこびを売らない姿勢が表れているからこそ漂うもの。立場をわきまえた責任感と実行力が発揮されたときにこそ、効力を発揮するのではないでしょうか。
仮に、部下の手柄は自分の手柄、部下の失敗は部下の責任という姿勢を貫き通している女性上司がいたとしたら、おそらくその女性に美しさは全く感じられないと思います。
どんなに年が離れている上司であっても、むしろ年上だからこそ、部下と無駄に張り合うことなく、大人としての包容力や寛容力に裏打ちされた美しさがあふれ出てくるようであれば、理想の女性上司として憧れられる存在になるのではないでしょうか。仕事の目的は、組織内で無駄に張り合うことにあるのではなく、いかに社会に有用なプロジェクトや業務を遂行できているかにあるのですから。
その軸を見失っていない女性は、上司の立場であろうが部下の立場であろうが、凛とした輝きを放っていることと思います。
せひともこのドラマを見ながら「しんの強さと上品な美しさ」が漂う女性年の差コンビの良好な関係性について、私自身も学び得たいと思っています。
経済キャスター、ファイナンシャル・プランナー。日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。TV、ラジオ、各種シンポジウムへの出演のほか、雑誌やWeb(ニュースサイト)にてコラムを連載。主な著書に『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。株式市況番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重TV・ストックボイス)キャスターとしても活動中。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。