「僕の人生は売り子」 カルビー会長退く松本氏の今後

挫折もあった。一番大きなものは商社マン必須の「英語」だ。あすから海外でものを売ってこい、といわれて何もできない。事前に話すことを覚えていき、片言の英語で伝えても、相手の話していることがわからない。何度も確認して「そんなことは言っていない」と否定されることばかりだったという。

「45歳になったらやめます」 トップを目指して

経営者に必要な第一は倫理観だという

売るのが得意な商社マン――。英語はともかく、能力と仕事はぴったりと合うようにみえる。しかし、松本氏は伊藤忠に入って3年ほどたったあと、「僕は45歳になったらやめると決めていた」という。理由は、「トップじゃないと面白くないとわかったから。会社で人を見ていると、普段いばっている課長さんも、部長さんにはペコペコする。部長さんは本部長さん。そしてその上に……とね」。

松本氏は、自分のたどってきた伊藤忠でのキャリアを「マイナー」だという。「トップにはロイヤルロードがあるんです。つまり、出世コースがあるんだけど、それに乗らない限り社長というのはなかなか見えてこないんです。僕みたいなマイナーな部署から伊藤忠商事の社長はありえない」

ほかの会社なら社長はあるかもしれない。そう思って45歳までに実力をつけると目標を定め、7月20日の誕生日に辞意を伝えた。「(力があれば)誰かが(自分を)買いにくるに決まっている、と思っていたね」。実際、松本氏は23社からのオファーを受ける。伊藤忠商事の子会社に取締役として出向し、「ボロボロだった会社」を6年で成長させた実績を買われ、ジョンソン・エンド・ジョンソンに転じた。

エシックス(倫理)を教えられたジョンソン・エンド・ジョンソン

商社で工作機械を売り、ヘルスケア分野に移り、食品メーカーへ。まったく異なる事業で経営トップに就いた松本氏。異業種でもやっていける「プロ経営者」になる条件は、3つしかないという。

最も重要なのが「倫理観」だ。21世紀で経営者をやろうとするなら、これがない人はどれだけ能力があってもダメだ、という。「あなたは昔からあったかと問われたら、ない。変えてくれたのはジョンソン・エンド・ジョンソン。今も僕の支えです」。松本氏は、今も肌身離さず同社の経営理念を記したクレド(Our Credo=我が信条)を持ち歩いている。

2つ目は「地頭(じあたま)」だ。「学歴ではない。学歴はクイズ力と記憶力を評価するだけ。小学校に入学してから、大学に至るまでずっと試験はクイズ。これが上手でもいいけれど、それは仕事と何の関係もない」と断言する。地頭のいい人は、「記憶するより考える癖をつけている」という。3つ目が「人から好かれること」だ。この3つに加えて実績を問うてきたのが松本流だ。

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