大げさな言い方かもしれないが、鶏の唐揚げを目にしない日があるだろうか。
コンビニエンスストアでは、レジ前のホットスナックコーナーだけでは飽き足らず、総菜コーナーにも弁当コーナーにも目立つ場所に置かれている。スーパーマーケットもしかりで、冷凍食品コーナーでも人気No.1を誇るという。居酒屋でも定番中の定番メニューであり、家庭内でも揚げ物の食卓出現頻度No.1を誇るのである。
時と場合に応じて主菜にも副菜にも酒のさかなにもなれる。そのフレキシブルさのおかげか、ベジタリアンやアレルギーのある人など食べられない事情がある人を除き、「食べたことがない」という人はほとんどいないのではないか? と思われるほどの人気のおかず、いや、「おかず界のスーパースター」なのである。国民食と呼ばれて久しいラーメンやカレーと並んで、鶏の唐揚げも国民食と呼ぶにふさわしい存在なのではないか、と個人的に思っている。
そもそも、鶏の唐揚げはどこから来たのか?
なんとなく中華料理のイメージがあって、中国から来たメニューなのかと私は思っていた。だが、日本唐揚協会によれば、実は鶏の唐揚げは日本独自に開発されたメニュー。広く食べられるようになったのはここ30~40年で歴史はそれほど古くないのだという。外食メニューに登場したのは1932年ごろで、鶏肉料理専門店が経営不振の打開策として考案したものだったらしい。
その後、戦後の食糧難の時代に養鶏場が多く作られて、鶏肉のおいしい食べ方として鶏の唐揚げが全国に広がっていったという。現在、大分県中津市では数多くの唐揚げ専門店が林立しているが、このエリアに養鶏場が多かったことも関係しているようだ。

レシピを説明する前に、ここでもう一つ解決しておきたい問題がある。それは、「唐揚げと竜田揚げとフライドチキンはなにが違うのか」ということだ。諸説あるが、私なりにまとめると、使う粉の種類、および下ごしらえや味付けの方法によって、下記のようになる。要するに、「唐揚げ」という大きなくくりの中に、「竜田揚げ」と「フライドチキン」が入るようなのだ。
食材に小麦粉や片栗粉を薄くまぶして油で揚げたもの。
【竜田揚げ】
素材にしょうゆ、みりんで下味をつけて、片栗粉をまぶして油で揚げたもの。
【フライドチキン】
鶏肉に下味をつけスパイスをブレンドした小麦粉をまぶして油で揚げたもの。
ううむ、なんとも奥が深い。鶏肉を揚げておいしく食べることへの執念を感じるではないか。