混迷期こそ過去の転機に学ぶ 山川、常識破りの歴史書

編集責任者の山本早穂子取締役は「これまで歴史の研究は縦割りで、西洋、イスラム、インド、中国など専門家は多いが、それが横につながる機会が少なかった。今回、転換期の年を決め、その年にそれぞれの地域で何が起きていたのか検証してみたら、今につながる大きな流れが見えてきた」と語る。今後2カ月に1冊のペースで2年かけて完結する。興味のある分野だけ読んでみてもいいだろう。

深めたい歴史への造詣

「『世界史外観』は歴史教科書の原点」と話す野沢社長

山川の歴史書の歩みは、終戦直後に始まる。それまで歴史の学習といえば、「国史」と呼ばれた日本史が中心で、欧米の歴史を学ぶ機会は少なかった。戦後、GHQ(連合国軍総司令部)の指導により、新制高校で「西洋史」と呼ばれた欧米などの歴史や、中国、インドなど「東洋史」を学ぶようになった。その後、合体して「世界史」となったが、教科書がなかったため、1949年に山川から発刊された『世界史概観』が代わりに使われるようになった。

高校向け世界史の教科書は、51年に検定を受けて誕生した。同社本社には、当時GHQに提出した教科書検定の書類が残っている。以来、70年近く、山川の教科書は歴史を学ぶ学生の伴走者になった。

GHQに提出した歴史教科書の検定書類

ここ数年、「歴女(れきじょ)」と呼ばれる歴史好きの女性が増えたり、社会人になってから歴史を学び直す機運が高まったり、ちょっとした歴史ブームになっている。こうしたニーズをくみ取る形で出版された『もういちど読む山川世界史』、『もういちど読む山川日本史』は累計で130万部を超える大ヒットになった。

日本資本主義の父といわれる渋沢栄一氏の玄孫にあたる、コモンズ投信会長の渋沢健氏は「欧米では歴史を語れない人は教養人と見なされない」と指摘する。先行きの見えない時代だからこそ、先達たちが過去の厳しい局面をいかに乗り越えたのかを学ぶ価値がある。大型連休などに歴史書を開き、時空の旅に出るのも悪くない。

(編集委員 鈴木亮)

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