おそらくこのリスクについては正確にとらえておられる方が少ないのではないでしょうか。

生涯年収という概念に疑問を持たない不思議

従業員として働いている人の第三のリスクは、一言で言うなら、収入の変動幅の小ささです。ですから、厳密に言えばリスクが少ないことがリスクです。

雑誌などで特集される生涯年収という概念がわかりやすいかもしれません。

つまり、ある会社にいる限り、多少の評価結果の違いや出世速度の違いだけでは、生涯年収はそれほど大きく変わらない、ということです。それは優良企業としてみれば安定の象徴でもありますが、それが生涯年収の天井にもなるということです。

人事制度がしっかりしている会社であれば、人事部にこう聞いてみてください。

「標準者の賃金カーブを見せてください」

公開していない場合もありますが、見せてもらえたとしたらとてもわかりやすい判断基準になります。それはつまり、あなたがその会社の従業員としてもらえる給与の道筋だからです。もちろん人事評価が良ければ何割かは増えるでしょうし、悪ければ逆に減ることになります。けれども、全体の6割~8割を占める普通の働き方の人たちにとっては、おそらく10%も差がつかないような設計になっているはずです。大企業なら、第一のリスクがほぼないこととあいまって、安定の象徴にもなる人事の仕組みです。しかしそれでもなお、第二のリスクには対応しづらいのです。

安定しているからこそチャレンジできなくなる

平均寿命が延びたことによる無職期間の増大という第二のリスクをクリアするためには、生活安定の源泉である、給与の仕組みそのもの本質に気づかなくてはいけません。

会社に勤務して給与を受け取る立場である限り、人事制度の枠の中で、計算された金額しか受け取ることができません。この額が大企業になるほど高額になり安定するため、多少の会社都合のキャリア変更も受け入れますし、老後についての第二のリスクについても「なんとかなるだろう」と楽観視してしまいます。

そして、仮にベンチャー企業に転職してIPOを目指すチャンスがあったり、自分自身が経営者として起業するチャンスがあったりしても、安定の方を選んでしまいます。

もちろんチャレンジには失敗の可能性があります。失敗した時、安定を選んでおけばよかった、と後悔することもあるでしょう。けれども時として、チャレンジしないことでユデがえるになってしまう場合があるのです。そしてその確率は、今後増えていくように思えてなりません。

平康慶浩
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。高度人材養成機構理事リーダーシップ開発センター長。

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