週末レシピ オムライス、ケチャップと卵の半熟がカギ
週末レシピ、今週の料理はオムライス。「ご飯と卵」という間違いない組み合わせ、「赤と黄色」という華やかなビジュアル、スプーン1つでパクパクと食べられる手軽さで、老若男女に愛されている。我が家ではハンバーグ、コロッケ、ハヤシライスと共に洋食四天王とたたえられ、「今日なに食べたい?」という質問の答えナンバーワンでもある。休みの日のランチに、オムライスほど幸せを提供できる一皿もない。
とはいえ「家では作らない、外で食べるもの」と決めている人が多いのも事実だ。オムライスには常に「失敗しそう」という恐怖がつきまとう。私も何度、辛酸をなめてきたことか。しかし断言しよう。オムライスは確かに失敗がつきものだが、リカバリーが簡単な料理でもある。「あ、やっちゃった!」となったら、途方に暮れる前に手を動かそう。最後はケチャップがなんとかしてくれる。
今日はオーソドックスな巻き込み型オムライス、そしてとろとろ卵のイマドキ系オムライスを作る。材料はいたってシンプル。それゆえ明暗を分けるのは調理法のみとも言える。ポイントは2つ。ケチャップの扱いと、卵の半熟具合だ。できたて熱々のうまさにシビれて欲しい。
ではまず、オーソドックスな巻き込み型オムライスから
【材料(1人前)】
卵 Mサイズなら3個、Lサイズなら2個 / ご飯 固めに炊いたもの150グラム / 鳥もも肉 60グラム / タマネギ 60グラム / ケチャップ 大さじ2~ / 水か牛乳 大さじ1 / バター 適量 / 塩、コショウ 適量
【手順】
(1)具材をいためる
(2)ご飯をいため合わせチキンライスを作る
(3)卵を焼き、チキンライスをくるむ
鳥もも肉、タマネギは1センチ角に切っておく。私は具の存在感がある方が好きなのでこの大きさだが、もっと細かくしてもいい。タマネギは店によってはペースト状のところもあるくらいだ。好き好きではあるが、どちらかというと具は細かいほうが失敗しにくい。
フライパンにバターを溶かし、まずタマネギと鳥もも肉をいため始める。もしチキンライスにマッシュルームなどほかの具材などを入れたい場合は、このタイミングで入れよう。火は終始強火。タマネギが透き通って、鳥もも肉にいい焼き色がついたら、軽く塩コショウを振って下味をつける。
次に入れるのは、ケチャップだ。ケチャップを具材によくからませ、フライパンに広げ焼き付けるようにして水分を飛ばしていく。ここでしっかりケチャップに火を入れるのが、第1のポイントだ。酸味が飛んでまろやかになり、後からご飯を入れたときにベタつかず、また色ムラになりにくい。よくいためたらご飯を加え、木ベラなどで切るようにほぐしていく。全体に均一な色がついたら、チキンライスのできあがりだ。このまま食べたくなるところをグッとこらえて、すぐ卵に取りかかる。
卵はボウルに割り入れ、ふたつまみ程度の塩と、大さじ1の水か牛乳を加える。卵は塩がききやすいので、ちょっと物足りないくらいにしておく。水分は卵をふんわりさせるため。牛乳でもいいが、卵の味をストレートに味わうなら、むしろ水の方がいい。箸で白身のコシを完全に切るように、しっかり解きほぐす。
卵を焼くのは、チキンライスを作ったのとは違うフライパンにして欲しい。本当は、卵専用のフライパンを用意するのが最高なのだが、家ではそんな優雅なことはしていられないだろう。フッ素樹脂加工のものを使っている人ならば、できるだけ新品に近く、傷がついてなさそうなものを。鉄製のフライパンを使っている人は、油がよくなじんだ愛用品を使用すること。
卵用のフライパンを火にかけたら、バターを溶かす。火は「ガス+鉄製フライパン」なら強火、フッ素樹脂加工もしくはIH使用なら強めの中火。バターがもう少しで溶け切るかも、という時点で溶き卵をフライパンに流し入れ、すぐに全体に広げる。
ここからは大忙しだ。卵はどんどん固まってくるので、箸でくるくる混ぜながら、全体に素早く火を入れる。できればこのとき真ん中を厚めにするといいのだが、それは未来の課題にしてくれて構わない。
ここで第2のポイント。チキンライスを入れるタイミングは「まだ生の卵液がフライパンに見える」段階でよしとすること。ちょっと早すぎるのでは? と思うかもしれないが、慣れないうちはこれでいい。プロならともかく、卵が全体にちょうどいい半熟になってからでは、もたもたと包んでいるうちに火が入りすぎてしまう。卵がカチカチに固かったり、焦げたりしたらオムライスは台無しだ。
半熟のうちにチキンライスをフライパンに加える。ここで箸からヘラに持ち替えると作業が楽だ。卵の周囲にヘラをぐるりと入れ、チキンライスにかぶせるように卵を寄せて行く。このあと決してプロのように「トントンとフライパンの柄をたたいてオムライスをひっくり返す」ことにチャレンジしてはいけない。それは破滅への近道だ。今日は無難な道を行こう。卵がはがれないようにそっとフライパンの端に持っていき、片手でフライパンを持つ。もう片方の手で皿を持ち、フライパンを傾けて皿の上にオムライスをひっくり返してできあがり。
さあ、どうだろう。うまくいっただろうか。以下、失敗例とリカバリーの方法をあげていく。
(1)卵が破れてしまった
破れたところにケチャップアートを展開するといい。大きな破れが1つだったら、大きなハートを描く。点在していたら、そこをうまくつなげるように名前を描く。全体的にボロボロだったら、お好み焼きのマヨネーズのごとくケチャップの雨を降らせる。人は派手な方に目が行くものだ。大丈夫だ、問題ない。
(2)ひっくり返すときにライスが飛び出てしまった
ご飯の量を欲張って多くすると、失敗しがちである。どうしてもライス多めにしたいガッツリ派は、卵で巻こうなどと思わずに、フライパンと同じ大きさのドーム型へとチェンジした方がいい。フライパンに直接皿を当ててひっくり返せば大丈夫だ。
(3)ひっくり返せたものの、形がいびつすぎる
ラップかキッチンペーパーごしに、手とヘラで修正しよう。卵は熱いうちなら修正がきく。キュッキュッと周囲から押さえて理想の紡錘形にし、皿の汚れはペーパーで拭き取っておく。大丈夫だ、誰も気づかない。
では次に、とろとろ卵のイマドキ系オムライスを作ろう。
【材料(1人前)】
卵 Mサイズなら3個、Lサイズなら2個 / ご飯 固めに炊いたもの150グラム / 牛肉(切り落としで十分) 60グラム / タマネギ 60グラム / デミグラスソース 150ミリリットル / 水か牛乳 大さじ1 / バター 適量 / 塩、コショウ 適量 / あれば生クリームなど
実は巻き込み型より、とろとろタイプの方が作るのはうんと簡単だ。しかもこのように上からソースをたっぷりかけるタイプは、およそ想定できるすべての難を隠してしまう。初めてのオムライスは、まずはこちらからチャレンジするといい。
フライパンにバターを溶かし、タマネギと牛肉をさっといためる。デミグラスソースは今回は缶詰を使ったが、濃縮や粉状など入手可能なもので構わない。具材と合わせ一度沸騰させたら、弱火で保温しておく。
ご飯はチキンライスか、ケチャップライスにしてもいいのだが、デミグラスソースがかかるため味がぶつかるように思う。なので私はご飯にバターと塩コショウするだけの、バターライスにすることが多い。デミグラスの味が強い場合は、単なる白ご飯でもいいだろう。あらかじめ茶わんなどで丸く形を作り、皿の真ん中に乗せておく。
卵は巻き込み型同様、塩と水分を加えたら白身をほぐすように箸でよく溶いておく。フライパンを熱くしてバターを溶かしたら、卵液を一気に入れ、くるくる混ぜながら半熟まで焼く。卵のふちから箸かヘラを入れたら、皿の上のご飯をめがけて卵をのせる。上からソースをたっぷりかけたらできあがり。
以前、洋食店のシェフに「オムライスの肝はコメ。コメがうまいことがオムライスの条件」と聞いたことがある。本当に気にすべきは「おいしいご飯を炊くこと」なのだそうだ。オムライスとは卵料理だ、と思っていた私の目からウロコが落ちた瞬間だった。みなさんも卵の扱いに慣れてきたら、次はおいしいご飯を炊くことに気を配ってみよう。お手製オムライスがぐっとおいしくなるに違いない。
(食ライター じろまるいずみ)
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