『空海』が大ヒット 日本映画、中国進出は日中合作で
米国に次ぐ世界2位の映画市場となった中国への日本映画の進出が加速している。2012~14年は日本映画の公開はなかったが、15年の『STAND BY ME ドラえもん』以降、16年に11本、17年は9本が上映された。ただ中国では外国映画の上映本数に制限があり、今後は日中合作が進む見通し。映画製作のビジネスモデルも変化しそうだ。
中国に進出した日本映画には興行面で成功を収める作品も増えている。『STAND BY ME ドラえもん』の興行収入は、日本での83億8000万円を上回る5億3000万元(約88億円。18年2月時点のレート、以下同)。16年は『君の名は。』が公開され、興収5億7662万元(約95億円)を記録した。
ビジネスチャンスがあるように見える中国映画市場だが、外国作品の進出には大きな障壁がある。政府による規制だ。中国と日本の映画交流を目的に、06年から日本と中国で映画祭を開催する耿忠(こうちゅう)氏は次のように語る。「中国では外国映画の上映本数を年間50~60本程度に制限しています。そのうち30本程度はハリウッド映画。残りを、日本を含む諸国が分け合う状況です」
そこで増えそうなのが日本側と中国側が共同出資する「合作」。日中合作映画は中国の国産映画として扱われ、本数制限の対象とならないためだ。17年12月には日本側はKADOKAWA、中国側は新麗伝媒と英皇電影が出資した『空海―KU-KAI―美しき王妃の謎』が中国で公開。2月に日本上映も始まった。
『空海~』は日本から唐に渡った僧・空海と、後に唐の時代を代表する詩人となる若き日の白居易が、楊貴妃にまつわる謎を解き明かすストーリー。『さらば、わが愛/覇王別姫』などで知られる中国の巨匠チェン・カイコーが監督を務める。
「角川歴彦会長とチェン・カイコー監督との関係から合作の話が始まりました。企画が進みだしたのは08年。中国市場が急成長したことから、ビジネス面でもヒットを狙うビッグプロジェクトとなりました」(プロデュースを手がけるKADOKAWAの椿宜和氏)
制作は中国側の主導で行われた。「原作は日本。脚本家は中国人。撮影スタッフも基本的に中国人です。日本側はVFXや音響を担当しました」(椿氏)。同作は中国で興収90億円を超え、大ヒットとなる成果を収めた。
今年は日本と中国の政府が日中合作映画の製作に関する協定を締結する見通し。また『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は日本版に加え中国リメイク版も製作されるなどビジネス展開の形は広がっている。
中国進出にはリスクも伴うが、耿忠氏、椿氏ともに「今後、日本映画の中国進出はさらに加速する」と予測する。収益における海外比率が高まり、映画製作のビジネスモデルが変化していく可能性もある。
(「日経エンタテインメント!」4月号の記事を再構成 文/羽田健治)
[日経MJ2018年4月6日付]
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