海底を「歩く魚」のレア映像 オコゼの仲間、種は不明
フランス人料理家のエメリック・ベンハラッサ氏は、インドネシアのバリ島沖で夜のダイビングを楽しんでいたとき、奇妙なものを目撃した。1匹の魚が、海底を2本の「足」で歩いていたのだ。そのとき記録した映像をご覧いただこう。
ベンハラッサ氏によると、その魚は、恐ろしい毒を持つオコゼの仲間のように見えたという。動画を見た学者らも、この奇妙な生物はヒメオコゼ属(Minous)の一種だと述べている。
言うまでもなく、ヒメオコゼに本当に足があるわけではない。足のように見えたのは、実際には胸びれの一部が進化の過程で分離したものだ。鹿児島大学総合研究博物館の魚類分類学者、本村浩之氏によると、ヒメオコゼの仲間はこうした「胸びれ遊離軟条」を使って、泥の中にいる虫や甲殻類を探しているのだという。
ただし動画に映っている魚が何という種なのかについては、学者たちにもはっきりとしたことはわからない。実物を手に取ってみないことには、近しい関係にある種を見分けることは非常に難しいというのがその理由の一つだ。
米スミソニアン国立自然史博物館のコレクションマネージャーで魚類学者のジェフ・ウィリアムズ氏は、この魚はストライプトスティングフィッシュ(学名:Minous trachycephalus)ではないかとみている。一方、カンザス大学生物多様性研究所の魚類学者W・レオ・スミス氏は、尾の色が薄いことを根拠に、ペインテッドスティンガー(Minous pictus)だと推測している。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2017年6月7日付記事を再構成]
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