「家の事は自分事」 夫を家事メンに育てる3ステップ

共働き家庭でトラブルのもとになりがちな、夫婦の家事分担問題。皆さんは、どうやって解決していますか? 最近は男性の意識が変わり、妻以上に家事をする夫も増えてきているとか。その一方、「全くやってくれない」と不満を募らせている妻もまだまだ多いと思います。戸井田園子さんは、ご自身の夫と息子を見事「家事メン」に育て上げたプロ中のプロ。そんな戸井田さんに、夫や子どもを「家事メン」に変える方法についてお話を伺います。
まずは「お手伝い」という意識の改革
日曜の朝、いつまでも寝ている夫を見て、こんなことを思ったことはありませんか?
「なんで私だけ、こんなに忙しいの?」
せっかくのお休みなんだから、日頃の疲れを癒やすため、ゆっくり過ごしたい。そう思うのは、どちらも同じなのに、それが実行できるのは夫だけ。私はやりたくてもやれない。この気持ち、どうしたらいいの!
そのイライラは、不平等感から来るもの。では、不平等感を解消し、夫と自分の立場をフェアにするにはどうしたらいいかについて考えてみましょう。
そのためには、まず夫に「家事は『手伝い』ではない」ということを分かってもらう必要があります。
例えば、夫が着たシャツは、家のために洗うのでしょうか。違いますよね。夫がまたそのシャツを着るために洗うんですよね。ということは、家のこと=「家事」ではなく自分のこと=「自事」なんです。自分のことを自分でやるのは、当たり前のこと。だから、一人一人が自分のことを、できるところから始めていこうということです。
では、具体的に仕事を分担するにはどうすればいいでしょうか。例えば洗濯の場合、「自分のシャツは自分で洗えばいい」ということになりますが、ひとつの家族のなかで、それぞれが自分のものだけ担当するというのは、あまり合理的ではありませんね。そこで、「これは、あなたの分までやってあげる。そのかわりに、これは私の分もやってね」という話になります。これが、「家事を分担する」ということなんです。
私は、以前からそういう考えを持っていたので、夫と結婚する前に「家事分担について話をしたいから、会議しよう」と言いました。そこで話したのは、「家事って大変なんだから、あなたも手伝ってよ」ということではなく、「二人で一緒に住むのだから、家事は担当を分けてやろうね」ということ。つまり、夫に「当事者である」という意識を持ってほしいということなんです。
ここでぜひ覚えておいてほしいのは、仕事の分担を話し合うのは「夫に当事者意識を持ってもらうため」であって、「どうして今までやってくれなかったのよ!」と責めるためでも、「これまで君にばかりやらせてすまなかった」と謝ってもらうためでもないということ。そこを勘違いしたまま話し合いを始めると、たいへんな修羅場を見ることになってしまうので、どうぞお気をつけて。
一週間分の家事を一緒にリストアップ
次にやるのは、「家事のリストアップ」。お互いの認識のズレを埋めるために、リストを作成するという作業です。男性は、口で言って分からなくても、データにして見せるだけで納得するという傾向があります。いわゆる「見える化」ですね。この特性を利用します。
リストアップ作業を通じて夫に分かってもらいたいのは、「家庭は、会社と同じ。そこに自分も参画し、維持していくための努力が必要なのだ」ということ。一緒にリストアップすることで、だんだんと当事者意識を持ち始めるのです。きっと夫は、「僕も結構、家事をやっているよね」と思っていますよね(笑)。だから、彼にもぜひ自分がやっている家事をリストアップしてもらいましょう。
といっても、机の上で思い出しながらリストアップするのではありません。実際にやってみて、やったことを1つずつ書き出すのです。まずは1週間分、実際にやった家事を書き出してみましょう。
そのときに気をつけたいのは、「名前のない家事」もきちんとリストに入れていくということ。ここでいう「名前のない家事」とは、「ゴミ箱に次の袋を入れる」とか、「玄関で靴をそろえる」とか、「空の箱を処理する」とか、「トイレットペーパーを交換する・芯を捨てる」というような仕事です。こういった細かい仕事は、ついでにやることが多いため、「家事のうちに入らない」と思うかもしれません。ですが、そういう細かい仕事も1つ1つ、丁寧に書き出してみてください。子育て中であれば、子どもの世話も家の事=「家事」と考えます。保育園の送迎、持ち物の準備、入浴、お着替え、歯磨き、寝かしつけなど、すべて書き出してみましょう。
そして一週間後、完成した家事のリストを二人で広げ、「さて、どの家事を担当したい?」となるわけです。このとき、必ずしも5:5にこだわる必要はありません。仕事の分担の比率は、状況に合わせて設定しましょう。わが家は収入比で決めましたが、仕事をする時間の比率で決めるという方法もありますね。もちろん、他の基準のほうがしっくりくるようでしたら、それで分けてもOK。あとで「あなたばっかり楽(らく)してズルい!」「なんか俺、損してない?」ということにならないよう、納得できる基準で比率を決めてください。
比率が決まったら、いよいよ家事の分担を決めます。最初は、夫に先に選んでもらうのがおすすめ。今まで家事をあまりやっていなかった夫には、その分、ハンディがあります。ハンディキャップを埋めるため、夫の希望を優先させてあげましょう。
ちなみに、この作業は機嫌がいいときを狙って始めるのがおすすめ。夫婦でビールでも飲みながら(といっても、酔っ払った状態で決めると「言った」「言わない」となりがちなので、ほろ酔い程度で)、楽しくやれたら最高ですね。
柔軟に「業務改善プロジェクト」を実行!
いよいよ翌週から、家事分担が始まるわけですが、そこで大切なのは以下の2点。
・感謝する
もし夫がうっかり忘れていても、「自分で決めたのに、なんでやらないの!」と怒ってはいけません。そして、家事をやっている夫を見かけたら、必ず「ありがとう!」と声をかけることも忘れないで。「自分の分担なんだから、そんなの当たり前」なんて思っていたら、うまくいきませんよ。自分だって、そう思われたら嫌ですもんね。
まずは1週間、決めた分担で家事をやってみましょう。途中、なにか不具合が出たら(たいていは出てきます)、夫婦でしっかり話し合います。新規メンバーに合わせて業務改善プロジェクトを組み直すことは、仕事をするうえでも当たり前ですよね。それと同じこと。この改善プロジェクトをちゃんと実行しなければ、元のもくあみ。面白くなくなった夫は、家事を投げ出してしまうかもしれません。
はたで見ていて、夫が大変そうだと感じたら、「この家事とこの家事、交換する?」とバーター交渉するのもアリです。あるいは、動線を整理するという方法もあります。例えば、食事の後片付けを担当していて「食器を置く場所が分からない」となったら、「どう置けば分かりやすい?」と意見を聞き、その通りに配置を変えてみる。つまり、自分の流儀に合わせてあげるんです。そうすることで、その場所を夫のテリトリーにしていくこと。これが、家事分担を長続きさせる裏ワザなんです。
家事分担を楽にするもうひとつの方法は、子どもも新規メンバーとして追加すること。子どもは、「今日から○○係よ」というと、喜んでやります。最初はなかなかうまくいかなくて、やることが増えてしまうかもしれませんが、時間をかけて育てていけば、そのうち力強いサポーターになってくれますよ。
子どもが自分の仕事をちゃんとやったかどうかは、チェックリストを作って管理するのがおすすめ。「終わったらシールを貼ってね」というと、モチベーションもアップします。成果を目に見えるようにすることで、「ママとパパとボクというメンバーが家を作っているのだ」という自覚を、子どもも感じやすくなるはずです!

(ライター 井上真花)
[日経DUAL 2018年3月28日付記事を再構成]
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