新学期の子供用電子辞書 実践的か楽しさ重視か
今どき、中高生の辞書といえば「電子辞書」だ。わが家でも中学生の子どもが通う塾の先生から「電子辞書を使うように」と勧められ、悩んでいる。そこで、電子辞書の2大メーカーであるシャープとカシオ計算機の「中学生用電子辞書」を検証することにした。シャープ「Brain」PW-SJ5とカシオ「EX-word」XD-Z3800を実際に試して、基本的な使い方から気になる英語の学習機能までを試してみた。同じ中学生用の電子辞書だが、そのキャラクターは明確に分かれた。
ハードの違いは?
シャープ「Brain」PW-SJ5は、液晶を約360度回転させることで、スマホやタブレットのように使える「学習スタイル」と、ノートパソコンのように使える「調べるスタイル」の2つが選べるオープンデザインを採用している。
液晶は5.5型854×480ドットで、明るく、電車の中などで見るときもハッキリ見える。サイズは幅152.4×高さ18.4×奥行き96.5mm(閉時・突起部含む)、重さは約270g。カラーはブルーとネイビーの2色から選べる。
バッテリーは充電式で、付属のアダプターを使って、繰り返し充電できる。また、市販のモバイルバッテリーも使うことが可能だ。
カシオ「EX-word」XD-Z3800の液晶は、5型528×320ドットで、PW-SJ5と比較すると少し小さめで暗く感じるが、画面のテカリが抑えられているので、照明などは反射しにくく場所によっては見やすく感じる。サイズは幅148.0×高さ18.5×奥行き105.5mm(閉時、最厚部)。重さはPW-SJ5と同じく約270gで、PW-SJ5よりも奥行きが大きい。カラーはホワイト、ブラック、ピンクの3色。
単3形アルカリ電池2本を使用し、パソコンや別売USB-ACアダプターからのUSB給電も可能なので、出先で電池が切れてしまっても、市販の単3電池を購入して使用できるメリットがある。
キートップはPW-SJ5のほうが大きい。配列は好みがあると思うが、筆者はPCのキーボードに慣れているので、決定キー(Enterキー)が大きく、右下にあるPW-SJ5が打ちやすかった。また、PW-SJ5は1~0までの数字の割り当てがある。例えば、検定モノなど答えを番号で選ぶコンテンツでキーボードが使えるので便利だ。
打ち心地については、PW-SJ5のほうが反応がよく、スピーディーに入力できた。中学1年生の娘もXD-Z3800は「キーボードを押しても入力できないことが多い」と少々不満だったようだ。
カラフルで楽しいシャープ
両製品とも、基本的な使い方はホーム画面の文字入力欄にキーボードから調べたい語句を入力するだけだ。文字を入力するたびに検索結果が絞り込まれていく逐語検索機能を実装している。
キーボードを使ったローマ字入力が苦手な場合、50音でも検索できるので安心だ。この際はタッチパネルを使って50音表から文字をタッチペンで入力する。
50音表はPW-SJ5が右から左、XD-Z3800は左から右になっている。PW-SJ5のほうが自然な50音表だと思う。また、50音表を使った検索で逐語検索ができるのはXD-Z3800。PW-SJ5は「決定」をタッチしないと検索候補が見られない。この点では、XD-Z3800のほうが使いやすいと感じた。
「しゅんじゅん」と検索してみた。どちらも入力途中で候補が表示される。PW-SJ5は候補が6個、XD-Z3800は7個。
XD-Z3800はアクセントや類語がまとめられているので、意味だけサッと知りたいときは見やすい。PW-SJ5は「あいまいチェック」できるのが便利だ。なんとなく調べている単語に自信がないときは、こちらで確認して間違いがないか、調べておくとよいだろう。
2017年の流行語大賞にノミネートされた「Jアラート」も検索してみた。どちらも一件だけヒットする。PW-SJ5が「ニューワイド学習百科事典」で、XD-Z3800は「現代カタカナ語辞典」だった。最新ワードにも対応しているので、ニュースや時事問題を知っておかなければならない受験生でも、これなら活用できそうだ。
英語はネイティブ音声ならカシオ
これからの英語学習は、読み書きはもちろん、コミュニケーション能力の習得が求められる。そんなトレンドを反映し、英語辞書や学習アプリはどちらも充実している。
PW-SJ5に搭載されている英語アプリ「ATR CALL」は、タッチペンやマイクを使って、「聞く」「話す」「読む」「書く」を取り入れたいろいろなトレーニングを楽しみながらくりかえし、英語の「音」の違いを聞き分けたり、正しく発音したり、正しいスペルを覚えられる。難しい問題はなく、英語初心者向きで、ゲーム感覚で楽しめる。娘も「楽しい」と挑戦していた。
XD-Z3800の「英会話スキット・トレーニング」は、会話のやりとりを実際に発声して学習できるコンテンツ。自分の声を録音して発音を客観的に確認でき、より自然な会話の流れを意識した英会話学習ができる。実際にネイティブな発音と自分の発音を聞き比べることができるので、スピーキングの勉強になる。
電子辞書は紙の辞書と違い、耳で学習できることも大きなメリットだ。スピーキング、リスニングが充実しているのはXD-Z3800だと感じた。ネイティブの発音が充実しているので、各種検定などを受けるのであれば、XD-Z3800をおすすめしたい。
英検問題集の使い勝手が違う
中学生であれば、気になるのは英検ではないだろうか。どちらも英検を学べる問題集は充実しているが、気になる点もあった。
英検アプリは、PW-SJ5のほうが答えやすい。前述した通りキーボードに数字が割り当てられているので、答えを数字で選んで「決定」を押せば、すぐに正解・不正解が分かり、一問ごとに解説が表示される。
一方、XD-Z3800はタッチパネルで数字を選んでから、キーボードの「決定」を押さなければならず、面倒だ。なお、PW-SJ5と違い、1ブロックをまとめて回答した後に答えと解説が表示される。回答と解説の表示方法については、好みのほうを選ぶとよいだろう。
個性が違うので、子どもに合わせた選択を
PW-SJ5は、液晶が360度回転し、画面が大きく明るい。キーボードも反応がよく、ハードの面では優れていると感じた。電車の中で立ったままでも、スマートフォンのように見ることができる。また、字も文字が太く、ハッキリしているので、娘も「見やすい」とのこと。またカラフルでかわいらしいキャラクターやイラストが多く、楽しく辞書を使えそうだ。基本的に辞書として使用し、基礎学力アップを目指すために、楽しく勉強するならPW-SJ5がおすすめだ。
XD-Z3800は、コンテンツの中身が充実しており、高校入試を見据えた学習から応用力強化に力を入れている印象だった。イラストなども少なく、事務的でそっけないが、単に辞書を引くだけでなく、勉強するための問題集が充実しており、さらにスピーキングに挑戦でき、ネイティブな発音が聞けるので「電子辞書を辞書として使うだけでなく、辞書で学びたい」という子どもに向いているように思う。
現役中学生の娘に聞いてみたところ、「カシオのほうが実践的」だが、「楽しさ、使いやすさはシャープ」とのこと。どちらが良いというわけではなく、キャラクターが違うので、実物を見ながら子どもの個性に合わせて選んだほうがよいだろう。
若い子たちはスマホユーザーが増えているため、キーボードが苦手という子もいる。フリック入力などができるようになると、もっと電子辞書を身近に感じるようになるのかもしれない。
(ライター 石井和美)
[日経トレンディネット 2018年3月22日付の記事を再構成]
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