貧乏癖がうつり子供が冒険しません
著述家、湯山玲子さん
貧乏癖が直らなくて、つい「高いなー」と金額で測るような物言いをしてしまう。子供たちまでもが、いつのまにか金額ばかり気にして冒険しない、何も手を出さないような性格になってきたように感じています。(神奈川県・女性・40代)
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私はプロデューサー稼業もやっているのですが、その最大ノウハウといえるのが「企画とともに常にエクセル(表計算ソフト)を走らせる」というもの。個別案件の値段を決定するには、収支や世間相場とのバランスを考えなければならないので、「全てを金額で測る」というのは当たり前。プロといわれる人はみな、この思考フレームを手に入れているわけで、つまりはいつも「高いなー」とつぶやいて仕事をしているのです。
相談者氏の「高いなー」発言は、「物事には金銭的な価値というものがあり、それを常日ごろから意識せよ」というメッセージを日常的にたたき込んでいるわけで、それはそれで素晴らしい経済教育ですよね。
さて相談者氏は「高いなー」という言葉のあと、そのモノを買っているのでしょうか? もしそうなら、それを家庭で使用中に子供たちに「高いなー」の結論を述べてはいかがでしょう。「このルームコロン、高かったけど、家に帰るたびにいい気分になるからオッケー」や「試食販売でつい買っちゃったけど、誰も食べないから捨てちゃった。高くついたわ」などなど。
私自身も小学生のとき、法外な値段のティーカップを「高いけど、私に買われるためにここにあったモノよ!」などと言い訳しながら購入する母にあきれ返ったことがあります。しかし母はそのティーカップをことあるごとに自慢し、うれしそうにお茶を飲んでおり、子ども心に「元を取るとはこのことだ」と学んだのでした。
お子さんにとって問題だと思うのは、「高いなー」思想により行動にストップがかかること。やらない理由として、最も説得力があるのが「カネがない」ということですからね。外に出かけず、家でユーチューブを見ていればタダ同然。つまりは将来の助けになる経験を積めないことになり、それは子供の人生にとって全くトクではありません。
「高いなー」が口癖でもいい。しかしその後に「高いけれど、これはやっとく(買っとく)価値があるよ(ないよ)」と相談者氏自身がひとこと付け加えてみる。そのことで、金銭の本来の目的、つまり「カネは使う人の人生を豊かにするための燃料である」ということが確実に伝わっていくと思います。
[NIKKEIプラス1 2018年3月3日付]
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