イノベーションが続く企業、なぜパクリが得意なのかリクルートワークス研究所副所長 中尾隆一郎

これらは芸術、武道あるいはスポーツでは当たり前の考え方ですが、仕事においてはどうでしょうか。技術職や技能職の一部では、この考え方は当たり前です。ところが、ホワイトカラーの仕事の進め方、あるいは営業の仕方や接客場面、サービス業では、自己流がはびこり、あるいは逆に過度なマニュアル化がなされていたりします。このあたりに、生産性の低さや離職率の高さの理由が見え隠れしています。

大事なのはまずTTP、それからS

若いメンバーに「先輩の仕事から学ぼう」、あるいは先輩社員に「若いメンバーに教えてあげてほしい」と伝えてもうまくいかないことが多いのが現実です。若いメンバーは、他者と違うオリジナリティーを重視しがちなので、先輩社員の「まね」をするという「言葉」に抵抗があります。先輩社員も、自分の仕事のどの部分が成果に結びついているのか「型」が分かっていないことが多いので、正しく教えることができないのです。そこで登場するのがTTPとTTPSです。

「まねる」にさえ抵抗があるのに、「パクる」のが良いわけがないと思われるかもしれません(余談ですが、アルファベットの略号にすると「パクる」というネガティブワードは出てきませんし、パピプペポの音はかわいく聞こえるので、若いメンバーからの評判はかなりいいんですよ。また、組織固有の言葉ができると一体感が醸成されるのが意外な効用でした)。

守破離との関係を補足すると、TTPが「守」つまり「型」を学ぶ部分で、「基礎」にあたります。TTPSは、それを進化させる「破」の部分で、「進化」「応用」にあたります。組織の新人は、まずTTPをします。そしてしばらくすると、TTPSを求められるわけです。

ちなみにTTPではTT、つまり「徹底的」が重要です。この「型」が良いと思ったら、まずは徹底的にまねしてみることが重要なのです。ところが、まねしやすい部分だけ、あるいは自分が理解できたところだけをまねする人が多いのです。これでは成果につながりません。「型」には、初心者が理解できない部分があります。しかし、それを無視していては基礎力がつかないのです。

もちろんこれは、理由を説明せずに「型」を押し付けることを肯定しているのではありません。きちんと説明してほしいのですが、それ以上にTTPのTTが大事であり、そうしない組織が多いと感じているので、あえて書かせていただきました。覚えておいてもらえるとうれしいです。

リクルートで表彰制度が活発な理由

リクルートグループが知見を共有するイベント「FORUM」

リクルートグループでは、各部門で表彰が活発です。年に1度は、グループ全体での表彰も実施しています。テクノロジー、スタッフ、営業、事業開発の4部門でそれぞれ10人程度が選出されます。その共有の大きな目的の一つは「ナレッジシェアリング」(知見の共有)。リクルートが創業以来重視している仕組みです。良い仕事を共有して、そこから学び、自分の仕事にもまねようということです。いわゆるTTPです。

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