イノベーションが続く企業、なぜパクリが得意なのか
リクルートワークス研究所副所長 中尾隆一郎
社内でのパクリ合いはイノベーションの源泉にも。画像はイメージ=PIXTA
「イノベーション」という言葉を聞かない日はありません。転職を考える皆さんにも「イノベーティブな企業で働きたい」と思う人が多いのではないでしょうか。では、イノベーティブな企業とはどんな組織でしょう。ごく少数の天才がイノベーションを担保している組織か、できるだけ多くの従業員がイノベーションを起こせるように支援する風土や仕組みを持っている組織でしょうか。今回は、後者の企業が持つ特徴を、「TTPS」をキーワードにお伝えします。
イノベーションに欠かせないTTPSとは
TTPSとは何か。MBAの教科書で読んだ気がするという読者もいるかもしれません。
TTPSは、「徹底」「的に」「パクって」「進化させる」。実は私の造語です。この手前に、TTP=「徹底」「的に」「パクる」というのもあり、こちらは私以外にも使っている方がいるようです。私は、できるだけ多くの従業員がイノベーションを起こせるようにするためには、組織がTTP、TTPSを担保しているということがとても重要だと考えています。
芸術、武道、スポーツでは当たり前のTTPS
「学生時代にスポーツ、芸術、武道の経験ありますか?」と聞くと、大半の方が「あります」と回答されます。その時には、まず基礎練習から始めたのではないでしょうか。新たなことを学ぶには、この基礎を身につける段階が重要です。ちなみに「学ぶ」は、「真似(まね)ぶ」が転じたといわれ、「先人」の「型」をまねすることでした。
もちろん、我流の「型」をまねても成果はありません。正しい「型」をまねし、それができた後で、その基礎に応用の技術を加えていくわけです。芸術や武道では、このステップを守破離(しゅはり)などといいますね。「守」が基礎、「破」が応用です。「型」を「守」って、それができる前提で、その「型」を「破る」のが応用だということです。そして、そこから「離」れて、新しい境地にたどりつくわけです。