
「『インターネットテレビ局』としたのは、番組が流れてきて、受け身で見られるサービスの方が広がると思ったから。オンデマンド型もいいんですけど、膨大なコンテンツから見たいものを探して再生するのは疲れると思うんですよね。それにオンデマンド型には、すでに競合サービスが相当数いるので、競争を避けたいという気持ちもありました。
200億という数字は、競合がやる気にならないように、と思って言ってたんですが思いのほか広まって(笑)。『それで持つんですか?』と言われますけど、最初から長期戦だと考えているので、必要な先行投資だと思っています。将来的には1000億円でも買えないメディアになるはずです」
若者が主役のメディアに
「さっき、テレビを1回リセットしたいと話しましたけど、それは簡単に言うと、今の地上波テレビがどうしても視聴率やスポンサーに縛られて、作りたいものを作れなくなっているからなんです。会社の業績にも出世にも影響する視聴率を『無視しろ』と言われても、無理だろうなとすごく思う。
だったら、ゼロからテレビを作り直した方が早い。ただ、郷に入れば郷に従えとやってきたこともいくつかあります。例えば、最初にCMは15秒から販売したのも、広告主が出稿しやすい商慣習から。1クールを3カ月にしたのも、芸能事務所がスケジュールを組みやすいからです。そこに逆らうと、AbemaTVへの出演がいろいろと面倒になってしまう」
その言葉からは「テレビ」というワードが頻出する。テレビは敵なのか、味方なのか。
「テレビは好きか、ですか(笑)。ネット業界にいるのでもともとネットばかり見てきたと思います。でも5年前にテレビ朝日の番組審議員になって、改めてテレビを見ると面白いんですよ。だけど、なかなか見ないんですよね。それはなぜかというと、ネットをはじめ面白いものが他にもあるから。この相対的な競争の中で、より使いやすく、便利でなくてはならないとUIにはかなりこだわりました。
地上波では、若者が自分たちのホームだと思えるような作品が減っているように感じます。『逃げるは恥だが役に立つ』は結婚適齢期の男女の話なので、学生にとってはアウェーの話。医療モノはさらにアウェーな世界です。若者が主役のメディアにしていきたいという思いが強いですね」
(ライター 泊貴洋)
[日経エンタテインメント! 2018年3月号の記事を再構成]