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瓶にライム挿すはウソ? メキシコビール本当のお作法

2018/3/1

ソース味のミチェラーダ エルサルバドルの国産ビールとともに

私は未体験であるが、メキシコのカンクンあたりのリゾートエリアではウスターソースの代わりにオイスターソースを入れるそうである。マギーソースはダイズからできたものであり、ウスターソースも野菜や果物を煮詰めたもので、どちらも植物由来。カクテルとしては多少気持ち悪い(失礼!)「割りもの」ではあるが、まあ許すとしよう。

しかし、オイスターソースって!? カルーアミルクに牛乳を使うくらいはあるが、ほかに動物性のものが入ったカクテルにはなじみがない。しかも、魚貝のフレーバーって!? と、メキシコ・中米のビールの飲み方の自由さには本当に驚かされるばかりなのである。

ミチェラーダは自分でビールを注ぎ入れて割って飲むものなので、濃さも自由自在だ。「混合ソース」入りのジョッキだけを頼むこともできる。

日本の居酒屋でおなじみ「ホッピー」(麦・ホップを原材料としたノンアルコールでビールテイストの炭酸飲料)は焼酎入りのジョッキに注いで飲む。酒飲みは焼酎を「なか」、ホッピーを「そと」と呼び、「『なか』だけちょうだい!」などと注文する。ちょうどそんな感じで、ミチェラーダも「なか」だけ注文できるのだ。

自分だけのちょうどいい塩梅で飲みたいというのは、世界の酒飲み共通のようである。

さて、もう一つメキシコビールに関して日本人が勘違いしているだろうことがある。それは、メキシコではみんなコロナビールを飲んでいると思っているかもしれないが、「メキシコにはコロナ以外にもたくさんおいしい銘柄がある」ということ。

キリンビールの調べによると2016年国別ビール生産量は1位の中国、2位の米国、3位のブラジル、4位のドイツ、5位のロシアに次いで、メキシコは6位。ちなみに、7位が日本である。メキシコというと「テキーラ」というイメージが強いかもしれないが、実は日本以上のビール大国なのである。

「コロナ・エキストラ」と同じメーカーからリリースされている「モデロ・エスペシアル」や、コロナ同様苦みが少なくクリアなのど越しの「ソル」、日本のメキシコ料理店でも見かける「テカテ」など、20種類以上の国産ビールがある(クラフトビールを除く)。

メキシコにはコロナだけでなくさまざまなビールの銘柄がある

先に紹介した「チェラーダ」や「ミチェラーダ」も、コロナだけではなく自分の好みのビールを注ぎ入れて飲む。だから、レストランやバーで「ミチェラーダください」と注文したら、「ビールは何にします?」と必ず聞かれる。メキシコ・中南米の旅に行くことがあったら、いろいろな組み合わせを試していただきたい。

ところで、なぜ日本ではコロナの瓶の中にライムを入れて瓶のまま飲むようになったのか、疑問に残るところである。昔は瓶の口を消毒する意味でメキシコではコロナにレモンやライムを添えていたとか、コロナの瓶は透明ゆえ日光に当たると化学変化が起き「太陽臭」がするので、それを消すためなど諸説ある。

マツダなど日本企業が多数進出しているメキシコ・グアナファト州の経済開発省日本代表事務所代表で、メキシコ・日本両国の文化に精通するロドルフォ・ゴンザレス氏に聞いたところ、意外な答えが得られた。

「メキシコでも、ライムを瓶ビールに挿す姿は見なくもないですよ。ただ、私が子供のころ、メキシコ人の大人たちは、缶ビールを飲むときにライムを搾っていましたね」。

缶のプルタブを外した脇に搾ったライムをため、缶の飲み口に塩とチリパウダーをつけ、缶のビールを飲むときにライムと塩とチリがいっしょに口に入るように飲んでいたというのだ。「メキシコ人はライムとチリが大好きで、ライムはそこらにいっぱいあってタダみたいなものだから、料理や飲み物になんでもかんでも使います」とゴンザレス氏。

さらに続けて、「コロナが海外(日本も含む)に輸出を始めるときに、キャンペーンとして、メキシコのビールのイメージを瓶ビールで表現したのが例のスタイルになったのではないでしょうか。瓶ビールでは缶ビールのようにライムの汁をためることができないですからね」という。

いずれにしても、メキシコのビールにライムは欠かせないようである。メキシコや中米式のビールの飲み方、是非お試しあれ。

(ライター 柏木珠希)


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