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キャリアの原点

米GEの「虎の穴」から脱落 静岡のソース老舗3代目 鳥居食品 鳥居大資社長(上)

2018/2/27

幹部養成コースと言っても、頭の出来を問われている感じはしませんでした。中身は意外と体育会系。メンバーが北米とアジアに散らばっていたものですから、国際電話で会議しようとすると、どうしても時差がネックになる。アメリカにいるときは必ず朝の6時、7時から、日本やアジアにいる場合は夜中に起きていないといけなくて、そういう意味でまず体力が必要でした。

GE時代はハングリー精神と英語力が足りなかったと振り返る

それとリーダーシップ。グループ企業とはいえ、いきなり他人がやってきてあら探しをされ、トップに報告されちゃうわけですから、相手も当然、身構えます。その緊張をほぐしながら短時間で仲良くなって、資料をもらい、問題を発見し、相手を巻き込みながら課題解決まで持っていかなくてはなりませんでした。

■「アドレナリン出しまくり」のリーダーが理想の世界

GEでその当時、理想とされていたのはアドレナリンを出しまくり、周囲を鼓舞するようなマッチョなリーダー。たとえるならば、アメリカンフットボール選手のようなイメージです。幹部候補となると、女性もメンタル的にかなりマッチョでした。

外資系と言っても製造業ですから、商社に比べて割と素朴な人たちの集まりでもありました。たとえば、最初は米コネティカット州にある施設で研修を受けるのですが、週末になると皆で車に乗り、ニューヨークへ遊びに行く。商社の人たちはけっこうおしゃれで、ブランドの服にも興味があるんですけれども、GEの人たちは短パンにTシャツみたいな格好で、全くファッションに関心がない。

ニューヨークのマディソンアベニューに「バーニーズ・ニューヨーク」の店舗があり、僕ら日本人が「あっ、こんなところにバーニーズがある!」と騒いでいたら、一緒にいたアメリカ人の同僚が真顔で「何だ、それは?」と言うわけです。「ええっ、知らないの? 新宿にもあるじゃん」みたいな感じで会話をしていました。

雰囲気としては、かなり「昭和」でしたね。僕がいた環境は特にそう。飲みニケーションが重要で、お酒は必ずしも飲めなくてもいいんですけれど、そういう場でのコミュニケーションがないと、仕事が円滑に進まない感じでした。

英語には「brown noser」という言葉があり、意味は「ご機嫌取り」です。アメリカにもそういう人たちは少なからずいました。大きな会社ですから、こうすれば次に行けるという、一種の処世術みたいなものはあるんです。そこを越えていかないと自分の成し遂げたいことができないのですから、ある意味、必要悪みたいなものです。僕はそれを否定はしませんけれども、自分自身が徹底してやれるかというと、やれないなと思いました。

出世は人それぞれのスケール感に基づくものだと思っています。そのスケール感にフィットするために必要なプロセスとして処世術がある。「世界のニッケルを俺が動かしてやるんだ」というスケール感もあるでしょうし、「地元浜松に伝わる遠州焼きを残したい」というスケール感もある。それぞれのスケールに合った出世があり、大きいスケールのことをやろうとするには、それなりの処世術が必要だということだろうと思います。

僕自身はどうだったかと言えば、GEで出世するにはハングリー精神が足りなかった。プラス、英語力。GEでリーダーシップを発揮するには、自分自身を鼓舞するだけではなく、周りのみんなも勇気づけなくてはいけないのに、自分の伝えたいことさえ、まともに英語で伝えられないのを感じていました。

考えてみたら、日本語でもそうなんです。従業員に対して「どう、最近?」と言葉では言えるけれども、それ以上の深いコミュニケーションができているかというと、そこは疑問符がつく。お酒もあまり飲めないし、性格的に他人の心に分け入り、懐に飛び込んでいくタイプではなかった。

あれだけの大きな組織で社長になれる器ではなかったんだろう、と思います。5年間生き残れれば最短で幹部になれるコースを、僕は結局、2年で脱落しました。

悲観に暮れ、日本に戻りました。どうしようかと考えているときに父親が病に倒れ、実家の会社を継ぐことになりましたが、それから本当に大変でした。

(ライター 曲沼美恵)

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