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デジタル・フラッシュ

スマホ写真の最前線 2つのカメラとAIで絵作り多彩に 西田宗千佳のデジタル未来図

2018/2/27

複数カメラや、AIを使った画像処理がスマホ写真の中核となりつつある

今のスマートフォン(スマホ)は、どれも「カメラ」機能がウリだ。特にハイエンドモデルは低価格なデジタルカメラを上回る製品も多い。この春、カメラ機能で選ぶならアップルの「iPhone X」、ファーウェイの「Mate10 Pro」、オッポの「R11s」は見逃せない。いずれも2つのカメラを搭載したデュアルカメラ仕様のスマホだが、「できること」がそれぞれ異なるのが面白い。加えて、AI(人工知能)で実現する画質の傾向や使い勝手の差も各社の考え方の違いが反映されている。

■「カメラフォン」をうたうオッポ

「自撮り」を含めて人物を好ましい雰囲気で撮影したいのであれば、新たに日本参入を果たしたスマホメーカー、中国のオッポが販売する「R11s」をチェック。自分と家族や友人がより美しく写り、毎日を楽しく暮らすための道具になるスマホ、という点をアピールしてアジア市場の若者を中心に支持されている。自撮りに使うフロントカメラは、2000万画素とかなり高精細だ。顔色や肌をより美しく見せる「ビューティーモード」を備えており、同機のキャッチフレーズはズバリ「カメラフォン」だ。また、オッポは画質向上のためにAIを使っており、「人間の顔の特徴点を254カ所抽出し、解析する」(同社)としている。

オッポの「R11s」。左上に2つのカメラがある

■デュアルカメラでも使い方は三者三様

今回紹介する3機種は、いずれもメインカメラはデュアルカメラの構成で、ポートレイト撮影などで背景をぼかした写真が簡単に撮影できる。一方で各社は2つのカメラをうまく組み合わせて独自機能を実現している。

デュアルカメラの組み合わせを望遠撮影に活用したのがiPhone X。2つのカメラを「広角と望遠」で使い分ける。16年に発売した「iPhone 7 Plus」から採用した手法だ。主に、画角を広く撮影したいときと、遠くのものを大きく撮りたいときで使い分ける。撮影された画像は基本的には、これらどちらかのカメラで撮影したものになる。

iPhone Xのメインカメラ。広角と望遠のカメラを備える

それに対し、R11sは「得意な明るさ」が違う2つのカメラを搭載する。R11sに搭載されているのは2000万画素と1600万画素のカメラなのだが、通常の明るさでは1600万画素のカメラを使い、暗いシーンでは、夜景などの暗い環境に特化した2000万画素のカメラを使う。切り換えは自動だ。

Mate 10 Proは、画像の精細感を重視した組み合わせ。2つのカメラのうち、片方は2000万画素のモノクロセンサーを、もう片方は1200万画素のRGBセンサーを採用しているのだ。写真を撮る時には必ず両方が写真を撮影する。そして、解像度の高いモノクロのカメラは主に形状や輪郭の情報を捉え、カラーのカメラでは色情報を捉えて、それをソフトウエア処理で合成して一枚の写真にする。すなわち、必ず2つのカメラからの情報を合成して写真を作るわけだ。この結果、遠くの風景などを緻密に撮影できる。

ファーウェイのMate 10 Pro。ライカ製のレンズを使ったデュアルカメラを搭載する

■AIを含めた「ソフトでの味付け」が特徴

2つのセンサーの使い方は、まさに三者三様のアプローチである。Mate 10 Proだけが「合成指向」のように見えるが、実際にはそんなことはない。iPhoneの「ポートレートモード」のような背景をぼかした写真を作るときは、どの製品も二つのセンサーで撮影した画像を合成処理する。スマホの薄さと大きさで、大柄な一眼レフカメラが実現するような「ボケ味」や「シャープさ」、「高倍率のズーム」などは実現できず、合成技術が写真の表現力を上げている。

iPhone 8 PlusとiPhone Xはポートレートライティングモードを使って照明のエフェクトを後から変えられる

スマホはデジカメよりも高性能なプロセッサーを搭載しており、ソフトウエアの処理能力はきわめて高く、自由度も高い。そのため、スマホのカメラ機能はソフトでの画質調整が大きな要素を担っている。Mate 10 Proが合成によって高画質な写真を作るのも、そうしたアプローチの一環なのである。

そして「ソフトでの画質調整」の主軸であり、差別化の主戦場となっているのが「AIによる画像処理」である。

AIによる画像処理はおおむね以下のような手順を取る。メーカーは、あらかじめ大量の写真サンプルを用意する。そこから「多くの人に好ましい写真」がどのようなものなのか、AIが特徴を見つけ出す。写真を撮影したとき、その写真がどのような種類のものなのかを大まかに判別した上で、「多くの人に好ましい」と思われるであろう特徴に合わせてAIが画質を調整する。

実のところ、こうしたアプローチは過去から行われてきたものだ。ただ、処理の方法や規模は「ディープラーニング」の登場により大きく変化した。

iPhone XとMate 10 Proは、プロセッサーにディープラーニングに関わる処理の一部を効率化する専用回路を設けた。アップルは「Neural engine」、ファーウェイは「NPU」と呼んでいるが、どちらも似たような回路である。こうした回路は今後、多くのスマホ用プロセッサーに搭載されると見られている。

実際にどういうチューニングをするかはメーカーの方針によって異なる。アップルはカメラアプリの設定項目を少なめに抑え、「シャッターを切るだけで、誰もが適切な写真が撮れる」ことを狙う。Mate 10 Proは明るいレンズを採用したことが特徴であり、精細感・抜けの良さ・鮮やかさのようなものを重視した絵作りである印象を受ける。カメラアプリ上の調整項目も多めで、「こだわって撮影する」人に向いている印象だ。R11sは、冒頭で挙げたように「顔」に特化した機能とチューニングを多く搭載している。

AIのような新技術をどう製品に生かすか、ということは昔から大きなテーマだった。現在のスマホにおいては、カメラの画質向上が重要な要素だが、何が高画質なのかは意外と難しい。ユーザーに価値をわかりやすく示すことが重要になっており、3社の製品のキャラクターにはそれが反映されている。

西田宗千佳
フリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。

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