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物議醸した「ムーミンの国」問題 知識の応用力育成を ダイバーシティ進化論(村上由美子)

2018/2/24 日本経済新聞 朝刊

写真はイメージ=PIXTA

ムーミンの舞台の国を問う大学入試センター試験の出題が物議を醸した。様々な指摘があるが、要は明確な正解がない可能性がある点が問題視された。実は近年、世界の教育現場では正解が1つとは限らない、あるいは正解が存在しないかもしれないことを子どもたちに気付かせようとする動きが盛んだ。その意味では、ムーミン問題も択一でなく記述式の解答を求めたのなら、受験生の思考プロセスを査定する設問として良問だったかもしれない。

暗記中心ではなく、問題提起力、コミュニケーション力、自主性や創造性を育成すべく、アクティブ・ラーニングなどの教育方法を導入している国は多い。知識の獲得だけでなく、その知識をどう応用させていくか。情報量と不確実性が急増するデジタル社会で生きていく若者が、異なる価値観を認めながらも、主体的に判断する力をいかに養っていくか。このような議論は、日本の教育関係者の間でも盛んだ。

経済協力開発機構(OECD)が実施するPISA(学習到達度調査)によると、日本の15歳の学力は世界でもトップクラスだ。しかし自己肯定力は低く、自分の受けた教育が将来役に立つと感じている学生が少ないことも指摘されている。成人の調査でも、同様の傾向が見られる。日本人の数的思考力と読解力は世界のトップだが、仕事でスキルを十分活用していると感じる人の割合が他国と比べ圧倒的に少ない。日本の教育システムが、実社会で必要とされている人材を育成することができているのかという疑問が残る。

膨大な情報や知識が瞬時にネットから得られる時代。経済のボーダーレス化、グローバル化はますます進む。21世紀の日本に必要なのは、多様な世界観に対する寛容性と自由な発想力を備えた人材であろう。

「なぜ『違う』ことは『間違っている』の?」と小学生の息子に聞かれた。「違う」という日本語は「異なる」と「誤る」の両方を意味するので、他と違うことは駄目なのか、という発想だった。英語では、differentとwrongは全く別の言葉だ。日本語が母国語でない息子の疑問から、日本人の思考回路の特性を考えさせられることになった。違うことが必ずしも間違いとは限らない――。そんなマインドが教室で浸透すれば、日本の子どもたちの伸びしろは相当なものである。

村上由美子
経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。

[日本経済新聞朝刊2018年2月19日付]

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