「家事シェア」で起業 貯金2百万円崩して試行錯誤
タスカジ・和田幸子社長(下)
従来型の家政婦ではなく、「家事のシェア」を提案したタスカジの和田幸子社長
大ヒットしたテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』は家事代行が広く知られるきっかけになったが、家事代行サービス会社「タスカジ」のビジネスモデルは、スタッフをあっせん・派遣する従来タイプとは全く異なる。マッチング型の新形態だ。当初はハウスキーパーを探すのも一苦労、資金も底をつきそうになった。試行錯誤の連続だったと和田幸子社長は語る。新形態の家事代行サービスはどのようにして根付いたのか。(前回「『家事が苦手』な富士通元SE 逆手に挑む代行シェア」参照)。
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世の中で家事代行サービスと呼ばれているものには、いくつかのタイプがあります。第三者に家事を頼むというと、多くの人は従来型の「家政婦さん」を思い浮かべるかもしれません。
古くからある「家政婦紹介業」は、有料職業紹介として許可を得た紹介所のみが行えるサービスです。人材紹介業に近く、家政婦として働きたい人からの求職を受け、求人者との間の雇用関係が成立するようあっせんしています。家政婦さんを常時、雇える富裕層以外には、なかなか手の届きにくいサービスです。
これとは別に、人材派遣業に近いタイプの家事代行サービスもあります。サービスを提供する会社がハウスキーパーを雇用し、依頼者の元へ派遣する業態です。この場合、サービス提供会社は人材を自社で雇用したり、教育したりするコストを負担しなければなりませんから、利用料金もその分、上乗せされます。大手家事代行サービスのほとんどは、このビジネスモデルを採用しています。
家事シェア型代行サービスの仕組み
タスカジのビジネスモデルはこれら以前からあるものとは違い、「マッチング型」に分類されます。雇用を前提とせず、家事スキルを提供したい人と依頼者が出会うためのインターネット上の機会を提供するサービスで、考え方や仕組みは、米国の「Airbnb(エアビーアンドビー、民泊仲介の世界最大手)」などと同じです。
個人契約を前提に、家事が得意な人がそれを必要とする人とスキルをシェアする形です。料金は1時間あたり1500円から。このような価格を実現できたのは、業者が間に入らず、サイト上でマッチングしていることが大きい。人件費が安いからだと誤解されやすいのですが、実はハウスキーパーが得られる報酬としては同種のサービスとしては比較的高く、1時間あたりで最高2100円という人もいます。
サービスの利用者は、「タスカジさん」と呼ばれるハウスキーパー約800人と、家事を依頼したい登録者約2万3000人(2018年1月現在)。依頼者の多くは共働きの家庭です。利用頻度は大半が週1回か隔週1回。マッチングはすべてサイト上で行い、取引はクレジットカードで決済しています。
私たちがいただく手数料は取引金額の約20%。そこには「タスカジさん」が誤って家の中にある物を壊してしまったといった場合に備える保険料も含まれています。基本は個人契約です。万が一、トラブルが起きた場合に相談できるサポートセンターを設置しているのに加え、初めて登録する「タスカジさん」には面接とテストを実施。定期開催の講習会でスキルアップできる環境も用意しています。