――新しい形とはどのようなものですか。

「これから増えるのは都市部の高齢者です。都市部には大企業で活躍した人なども多いので、そうした人の能力を生かしながら交流を促せる仕組みが必要です。千葉県松戸市と共同で実験をしたところ、マネジメントを任せたりすることで男性でも多くの人が参加してくれています。孤独な人をゼロにすることはできませんが、減らしていくことはできると思っています」

藤森克彦・みずほ情報総研主席研究員「家族以外の支え合いを強める場づくり必要」

――90年代に英国で4年研究されたご経験がありますね。

藤森克彦・みずほ情報総研主席研究員

「私は90年代後半に英国にいましたが、その前の保守党政権の改革がもたらした功罪がともに現れている時期でした。80年代のサッチャー首相は社会保障の削減など『小さな政府』路線の改革を進めました。サッチャー首相は就労意欲が低いなど貧困者の姿勢を問題にし、『悔しかったらがんばりなさい』という考え方をとっていました。改革の結果、英国では所得格差が拡大し、『社会的排除』という問題が起こりました」

「貧しい人々は、単に経済的に貧しいだけでなく、低所得・スキル不足・無職の悪循環に陥っています。家族や地域が崩壊し、社会的に孤立している人も少なくありません。貧困と孤立が重なって、悔しくても自力で頑張れるような環境にはなかったのです。そこで90年代後半に労働党のブレア首相が、低所得者にスキルをつけるなど、社会的に支援する政策へとかじを切ります。しかし、リーマン・ショック以降、公的な支援は減る方向にありました。今、孤立担当相の動きが出てきているのは、こうした貧困と孤立が一層深刻になっていることがあるのかもしれません」

――日本の孤立の問題をどう見ていますか。

「孤立にはいろいろな要因があると思いますが、単身世帯が増加している中で、孤立が深刻化していくことを懸念しています。例えば、一人暮らしの高齢男性の6人に1人は、2週間に1回以下しか会話をしていないという調査もあります。一方、40~50代の単身世帯では、『頼れる人がいない』と感じている人が多いです。この年代は行政支援の対象になりにくい一方で、同居家族がいないことからいざというときの不安があるように思います。未婚の一人暮らしが増えているので、社会として孤立を防止することが必要だと思います」

――どうしたらいいでしょうか。

「日本は家族による支え合いが強い国だといわれています。家族はこれからも大切ですが、一人暮らしや未婚者が増える中では、家族以外の支え合いを強めていくことが重要だと思います。そのために必要なのは『場』づくりでしょう。地域の人々が交流できる場や、困りごとを持つ人が気軽に相談に来ることができる場も必要だと思います。地域の課題解決に向けたコミュニティービジネスの場があってもいいでしょう。こうした場を通じて、仲間や地域との関係性も生まれると思います。簡単なことではありませんが、NPO法人などでは、地域住民と一緒になってコミュニティを作るノウハウをもっているところもあります。そうしたところからノウハウを吸収し、人材を育てていく必要があります」

(福山絵里子)

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