「残業とおじさんは嫌い」が改革の原点 青井丸井社長青井浩 丸井グループ社長(上)

白河 一般社員たちが自主的なプロジェクトを立ち上げたということですが、以前青井社長自身も「残業が嫌い」とおっしゃっていましたよね。

青井 そうなんです。僕自身、残業が大嫌いなんですよ。仕事は好きでも無駄な残業が好きな人はいない。

僕も、かつては長時間の残業を強いられる環境に身を置いていました。当時は、体力的にも精神的にも疲労がたまり、極限状態まで達していたと感じます。

僕が営業を担当する取締役だった時のことです。毎週、午後3時から夜10時まで夕食もとらずに行われる「営業会議」というものがありました。バブル崩壊後の91年ごろから始まったもので、急落した業績をどうすれば回復させられるかと、「ここは正念場だ」と責任者たちが一堂に会して時間も構わず議論をしていたのです。

当初は、数年努力すれば業績は回復するだろうと考えていました。しかし、回復どころかどんどん悪化していったのです。そのまま5~6年が経過し、僕だけではなく、周囲の責任者たちも限界に近づいていました。

そんなある日、いつもの営業会議で、食事もとらず頭がもうろうとしている時、はっと気が付いたのです。「いつも同じおじさんたちばかり集まって、延々と意味のない議論をしていること自体が、業績が回復しない最大の原因なのではないか」と。

白河 素晴らしい啓示が降りてきましたね。

青井 神の啓示でしたね。それ以来、僕は「残業」と「おじさん」が大嫌いになりました。そこから、働き方改革とダイバーシティーに力を注ごうと心に誓ったのです。

白河 その後、働き方改革に取り組んだ御社は、徐々に業績を回復させていきました。「残業を減らしたら、業績が上がった」という見本のような企業だと思います。一方で、「本気で労働時間を減らしてしまうと売り上げも落ちるのではないか」と考える経営者もたくさんいらっしゃいます。

青井 残業時間は減りましたが、営業時間は少し増えたのです。例えば店舗の場合、以前は9時間営業ですとシフトに縛られない「通し勤務」が可能でした。

その後、世の中が少し夜型になってきたうえ、当社のお客様は若い方が多いということもあり、閉店時間を夜8時から9時、あるいは8時半に変更しました。すると、どうしても交代制でやらざるを得なくなったのです。

そこで、残業は一切やらないとしたうえで、最大50ものシフトパターンを組み合わせて、店長やマネジャーがきめ細かく管理するようにしました。

白河 店舗の方がシフトがある分、残業をしない形で回っているわけですね。

青井社長は「無駄な残業時間を減らすことで、仕事自体も楽しくなる」と言う

「自主的に取り組む」ことが成功要因

白河 働き方改革を進めるときには、3つの要素が必要だと考えています。一つはリーダーシップ。2つ目は制度などのインフラ整備。3つ目はマインドセット。このあたりは、どのように工夫されていたのでしょうか。

青井 まず、リーダーシップが極めて大切だと思います。トップが残業に対して肯定的だと、自然と社内に伝わってしまいますし、評価軸が「残業時間」になってしまうんです。しかし、僕は「残業は敵」「残業は全く評価しない」ということを貫いてきました。ボトムアップも大きいのですが、僕の姿勢は社内にも大きな影響があったと感じます。

制度に関しては、先にも触れましたように、管理者たちががんばって最大50ものシフトパターンを組んでくれたことが、残業時間を削減する仕組みになっていたと思います。

最も大事なのは、マインドセットだと思うんですよね。そこは、一人一人が自主的に考えて、話し合い、お互いに働きかけないとなかなか浸透していきません。

例えば、ノー残業デーを決めて、夕方6時半を過ぎると上司が見回りをするというように、「残業をやめろ」と言うだけでは、あまり意味がないと思うのです。

当社の基本的な考え方は、繰り返しになりますが、「無駄な残業が好きな人なんか、誰もいない」ということです。みんな、仕事を効率的にこなし、時間通りに切り上げて、その後は家族や友人と過ごしたり、習い事をしたり、趣味に興じたり、自由な時間を過ごしたいわけです。

無駄な残業時間を減らすことで、仕事自体も楽しくなる。それを上が強制するのではなくて、みんなが自主的に、やりたいようにできる環境づくりを進めていくことが大切だと思います。

人に言われてやると、すごく「やらされ感」が出てしまいますよね。そうじゃなくて、みんながやりたいことを実現するためにプロジェクトを立ち上げてもらい、会社はそれを後押しするのです。

自主的にやりたいことができる環境をつくることができれば、自然と働き方改革は進みます。そこで重要になるのは、トップなどの影響力のある人が、それを信じられるかどうかだということ。ここが、意外と決め手になるのではないかと思います。

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