「東大に一番近い」筑駒のOB 先端技術の旗手に次々

同部の同級生には数学の天才もいた。国際数学オリンピックに5度の出場を果たした大阪大学准教授の大島芳樹氏だ。瀬尾氏は「中学1~2年の時に大学の数学も解いていました。中高で5度の出場は日本人として前人未到の記録じゃないですか」という。

筑駒OBの瀬尾拡史氏は医学を中心に科学専門のCGコンテンツを制作

瀬尾氏が興味を抱いた3DCGのアルゴリズムは高等数学の塊だ。大島氏は、瀬尾氏ら部の仲間に、その基礎となる三角関数や行列、ベクトルなどを講義してくれた。今も瀬尾氏は当時の資料を大切に保管している。

瀬尾氏と大島氏は、同じ東大でも医学と数学という別々の分野に進んだが、10年にくしくもそろって東大総長賞を受賞している。その年の学業での受賞者はわずか7人、極めて優秀な学生やその研究活動などを評価して選ばれる。

瀬尾氏の恩師で、今も親交のある筑駒の大野新副校長は、「瀬尾くんは画期的な3DCGをつくりましてね。当時スタートした裁判員制度に用いる3DCGの作成を最高検察庁に提案して、その裁判員裁判第1号事件の証拠資料となる3DCGを制作したんです。彼の3DCGは裁判にも活用できるんだと驚きました。筑駒の生徒はもともと『地頭』がいい子ばかりだが、発想が柔軟で面白い生徒が多いですね」と話す。

筑駒は芸術家も輩出している。ピアニストで作曲家でもある森下唯氏。瀬尾氏の4学年上の憧れの先輩で、筑駒の音楽祭で披露するピアノにしびれた。森下氏は東京芸術大学に進学した。瀬尾氏は、「実は筑駒時代に面識はなかったのですが、私の制作したCG映像の音楽を森下さんにお願いしたいと思いました。CGに音はすごく大事なんです。失礼を承知でいきなりメールしたら、二つ返事でいいよと。私が想定したより100倍もいい音楽をつくっていただいた」という。

筑駒時代に森下氏は生物部に所属し、瀬尾氏と同様に人体に強い関心を持っていたそうだ。「森下さんは人体の中身にも造詣が深かったので、親和性が高かったんだと思います」という。

異能の経営コンサルタントと呼ばれる経営共創基盤最高経営責任者(CEO)の冨山和彦氏も筑駒時代に瀬尾氏と似たような体験をした。筑駒の名物は3日間続く文化祭。中学1年生の時に、高校3年生だった野田秀樹氏の演劇に衝撃を受けた。「高3になったら、あんなすごい芝居をつくれるのか」。女子高生たちが長蛇の列をなしていた。

冨山氏は演劇の道には進まなかったが、「独創的で才能にあふれた人がたくさんいて、すごく刺激的だった。東大に入ったら、普通の人が多いなと感じましたね。筑駒OBは大企業の経営者になるタイプではなく、自分の考えを持ち、研究を極めたり、革新的な事業を手掛けたりするタイプの人が少なくないんです」と振り返る。

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