病欠が長引いたら 仕事と治療で受けられる支援
新年早々、インフルエンザにかかり、寝込んでしまいました。病気は予防第一ですが、体調が悪くなったときは無理せず、早めに医療機関へ行きましょう。
今回は病気治療と仕事との両立について考えてみます。
「働き方改革」がキーワードになっています。「働き方改革は残業時間を減らすこと」と思われがちですが、それだけではありません。
皆さんの中にはワーキングマザーもいれば、親を介護している人、がんやうつ病などの病気で療養中の人もいるでしょう。それぞれの事情に合った働き方を考えるのも、働き方改革のひとつです。
例えば長期療養が必要な病気にかかり、満足に働くことができなくなったとしましょう。「仕事を辞めて、治療に専念しようかな……」という考えが頭をよぎるかもしれません。
でも、仕事を辞めてしまうと収入は途絶えます。生活費、教育費はもちろん、肝心の治療費も賄えなくなってしまう。
こんなケースがありました。がんにかかったAさんは会社を休職して手術を受けました。手術は成功しますが、治療は切っておしまいではなく、術後も通院しながら抗がん剤治療を受けることになりました。
働きながらの抗がん剤治療に不安もありましたが、経済的な理由でAさんは仕事を続けることを決意します。
復帰に際しては会社と話し合いをし、(1)残業と出張のない部署に異動(配置転換制度)、(2)療養中の勤務時間は10~15時(短時間勤務制度)、という働き方で仕事を続けることにしました。(1)も(2)もAさんの勤務先が用意している人事制度です。
当初は会社や同僚に迷惑をかけるのではと不安だったそうですが、制度のおかげもあり、働き慣れた職場で上司や同僚のサポートを受けながら、仕事を続けることができました。
治療しながら働き続ける 辞めるのは最後の手段
Aさんが使ったのは勤務先の制度ですが、治療と仕事との両立をお金面でサポートしてくれる心強い制度もあります。
まずは「健康保険の傷病手当金」。業務外の病気やケガで仕事を休むことになり、給料がもらえなくなった場合、加入している公的な健康保険からお金が出るという制度です。
制度を使うには一定の条件があり、支給額は本人の給料によって変わります。例えば月収が約24万円なら1日当たり5333円程度(注1)がもらえます。治療のために会社を30日間休み、その間無給だったとしたら約14万円(最初の3日分は支給なし。5333円×27日分)がもらえるわけです。支給期間は最長で1年6カ月です。
2つ目が「健康保険組合の付加給付制度」です。大手企業などの健康保険組合に限られますが、医療費が高額になったとき、3割の自己負担額の一部を補助してくれたり、傷病手当金を1年6カ月を超えて支払ってくれたりと、独自の制度を設けていることがあります。
例えば医療費(注2)の総額が100万円だった場合、自己負担額は30万円(3割負担)ですが、高額療養費制度(注3)により、一定額を超えた分は払い戻されます。年収400万円の場合、自己負担額は8万7430円で済みます。
健康保険組合の付加給付制度の上乗せがあれば、自己負担額はさらに少なくてすみます。
病気になってから慌てないように、会社の各種勤務制度(就業規則など)や健康保険組合の付加給付制度の内容をしっかりチェックしておきましょう。
注1:給料を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額を30で割り、3分の2相当額を1日分として支給。標準報酬月額が24万円なら、24万円÷30日×(2/3)=約5333円 注2:保険治療 注3:1カ月の医療費の自己負担が上限額を超えた場合、超えた額を支給
今月の回答者
社会保険労務士・FP(ファイナンシャルプランナー)。望月FP社会保険労務士事務所代表。大学卒業後、生命保険会社、独立系FP会社を経て独立。公的年金や保健、住宅ローン、ライフプランニングなどの個人相談ほか、セミナー講師としても活躍。
[日経ウーマン 2018年3月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。